楽天は6月16日、東京・練馬区にある東京都立第四商業高等学校において、2014年度「楽天IT学校」の授業を開講した。同授業には、電子商取引の講義を専攻する2年生・27人が参加。インターネット・ショッピングモール「楽天市場」の店舗運営ノウハウを学んでいく予定だ。
楽天IT学校はCSR活動の1つで、2008年から毎年開催されており、これまでに全国52校で実施(6月時点)。楽天社員や楽天市場出店者を講師に迎え、約1年で全7回の講義を行っていく。
参加する生徒らは、職場訪問やネットショップにおける販売戦略の立案、ホームページ作成による売り場の構築、商品プロデュース、実際の販売までを実践を通じて学ぶ。最終的には、全国の楽天市場出店者が一堂に会する「楽天新春カンファレンス」において、楽天IT学校に参加する全高校がプレゼン大会に参加。1年間の学びについて発表し、実際にネットショップを運営する出店者から評価してもらう。
7回目の開講となる2014年度楽天IT学校は、実施校を21都道府県25校に拡大した(2013年度は15校)。昨年度実施のなかった東京から、今年度は東京都立第四商業高等学校の参加が決定。6月16日、「インターネットショッピングのポイント」と題した初回の講義が実施された。
講師として、楽天でECサイトのコンサルタントを務める白石涼氏が登壇した。楽天の企業概要を簡単に説明した後、「楽天市場は、お客さんと店舗さんがあって成り立っている。皆さんには実際に店舗さんの販売ページに手を入れてもらうことにもなるので、授業は楽しみつつも、責任を持って取り組んでほしい」と呼びかけた。
また、講義の序盤で同氏は、生徒にインターネットを使って買い物をしたことがあるかと質問。これに対し、経験があるとした生徒は27人中5,6人で、「2013年に北海道で講師を務めた際は、参加生徒のほどんどが『ネットで買物をしたことがある』と答えていた。地域によって違いがあるのかも」と、少し驚いた様子を見せていた。
ネットショップで大切なことは「どう売るのか」だ
講義がネットショップについての説明に及ぶと白石氏は、和菓子やハンガー、猫砂など一見共通点の無い10個の商品名をスクリーンに映した。生徒に、この中で月に300万以上の売上があるものはどれかと問いかけた後、その全てが正解であったことを明かし、その理由を考える時間を設けるなどした。
また同氏は、「どのような商品でも、欲しいと思っていない人がいる。その人にどうやったら必要と思ってもらえるのか、『何を売るかでなく、どう売るのか』が大切」と前置きし、生徒に「あるグループワーク」を持ちかけた。
そのグループワークとは、「『「高学歴・高収入・スポーツ万能・育ち良し』という高スペックを持ち合わせた西園寺秀麿(仮想の人物)を女友達に紹介する」というもの。生徒からは、そのスペックの内容を伝えるという声が多く上がった。
この結果を受けて同氏は、商品の価値を伝える3つの方法として「Feature・Advantage・Benefit」について説明。Benefitは、「商品を購入・利用した際に、お客さんが手にするハッピー。これは、FeatureやAdvantageといった商品の優れた点や仕様を説明したものと違って、主語がお客さんになる。ネットショップでは、このBenefitを伝えることが最も重要」とし、グループワークを例にしながら、Benefitを考えることの難しさを示した。
楽天市場出展企業 ピービーアイ 代表取締役 高木孝氏 |
次回の講義は、第四商業高等学校での楽天IT学校実施に協力する楽天市場出展企業・ピービーアイの代表取締役である高木孝氏が教鞭をとる。これにともない同氏は、16日の講義の最後に生徒との顔合わせをし、「物を売ることの楽しさを伝えていけたら」と意欲を語った。
今回の協力に至った理由の1つには、「高校生との接点を持つこと」をあげていた。同社が販売する商品は、20代前半を想定とした男性衣料品。今後、ユーザーとなり得る層と関わる中で、新しい着眼点やニーズをくみ取るほか、ネットショッピングへの恐怖を払拭したいという狙いがあるという。
楽天IT学校へ参加を決めた、第四商業高等学校の狙いと今後
講義終了後、東京都立第四商業高等学校 校長の大林誠氏は、「来年も同じ講義が開講できるわけではない(楽天IT学校参加校は毎年変わる)。このノウハウをどのように活用し、どのように教師陣に伝えていくかが学校側の課題だ」と述べた。
電子商取引授業は、2009年に文部科学省が発表した新高等学校学習指導要領において、2013年度から全国の商業高校で段階的に導入することが決定したもの。情報通信ネットワークを活かした商取引や、広告・広報に関する知識と技術を習得させることを目的としている。
同氏は「(一般的に)物を売った経験のない教師が電子商取引を教えると、どうしてもWebページの制作やその見栄えなどに比重がいってしまう。楽天の社員や出店者などの現場にいる人から実践的に学ぶことのできる楽天IT学校には期待している」とした。
また、「情報通信技術を使うことは手段。これを習得させて終わるのでなく、この手段を使って何をするのかを自主的に考えることのできる生徒を育てたい」と今回の参加への強い想いを語っていた。
授業の最後に記念撮影を実施 |
報道関係者も訪れていた |