「Vine」やホンダの「RoadMovies」、「Instagram」など、ショートムービー系のアプリが人気を集めつつある。特にVineは、中高生など若年層からの支持を集めていると言われているが、ヤフーも13日よりショートムービーアプリ「Yahoo! Chocotle(チョコトル)」の提供を開始した。
Chocotleを開発したのは、同社のメディアサービスカンパニー UGCメディアユニットと呼ばれる「Yahoo! 知恵袋」などを手がける部署のユニットマネージャー 森 健氏。同じメディアサービスカンパニーで事業推進本部の山崎 英海氏と共に話を伺った。
Yahoo! 知恵袋は、ユーザーが投稿したコンテンツをユーザーが見に来るという、いわゆる「CGM(Consumer Generated Media)」の先駆者の一つだが、Chocotleについても、その点を意識し「ヤフーのサービスでユーザー投稿できなかった"動画"を投稿できるようにしたい」(森氏)ところから、1年前にプロジェクトが始まったという。
山崎氏によると、ユーザー調査をしたところ「意外に思えますが、写真とは異なって動画を撮影する習慣がない」とのことで、アプリを開発する上で、ユーザーの心理的な障壁を下げるために「動画撮影」「共有」「閲覧」の"シンプル化"を意識したという。
「ユーザーは、動画を撮影する際に何分も時間を切り取ることにプレッシャーを感じるようでした。そこで、撮影をワンタップで3秒、長押しし続けることで10秒撮影と、気軽に撮影してもらうことを重要視しました」(山崎氏)
Instagramなど、写真や動画にエフェクトをかける機能も流行っているが「そのような機能を付けると、やはりユーザーが『加工しなくてはならない』というプレッシャーがかかってしまう」(山崎氏)として、搭載を見送った。その結果、動画撮影から投稿まで、字幕とサムネイルを付けるだけの簡単撮影、簡単投稿ができるようになったという。
最大の魅力は時間の共有
しかし、この"シンプル"はあくまでアプリを使ってもらう為のスパイスでしかない。Chocotleの最大の魅力は「あの時、あの瞬間を共有できる」ことにある。
例えば、現在サッカーワールドカップが開催中だが、日本代表戦に関する「アルバム」を作成すると、そのアルバムに対して友人同士で投稿できるようになる。投稿した動画は、撮影時間順に並べ替えられる(設定で変更も可能)ため、ゴールシーンのスタジアムの状況、スポーツカフェの状況をスマホ上で同時に体感できるようになる。
「披露宴で、参列者が各テーブルに着いて、写真のような感覚で撮ってもらう。ケーキカットから、お父さんお母さんへの挨拶まで、結婚式のアルバムを用意して、そこに投稿すれば、即席のウェディングムービーができると言った用途も考えられる。リアルタイムでアルバムが埋まっていくところに面白さがある」(山崎氏)
YouTubeのような存在に
リリースしたばかりのChocotleだが、すでにUI改良などの予定が詰まっている。近年は、アジャイル開発と呼ばれる短期の開発スケジュールでアプリを更新していく手法がトレンドで、改良サイクルを早く回すことで「イケていないと思ったところをすぐに直せるように」(山崎氏)したという。
アジャイル開発を進める上で一つのキーファクターとなったのが「Androidの先行開発」だ。今回の発表はAndroid版のみで、iOS版については8月を予定している。
「プロジェクトが始まったのは1年前でしたが、世界のアプリ市場を見据えた時に、伸びしろがあると感じたのはAndroidでした。Androidは出したいタイミングでアプリを改良し、出せる場所。基本機能を世に送り出すことはできたので、追加機能を矢継ぎ早にリリースしたいです。もちろん日本市場ではiPhoneが強いので、iPhoneについてもしっかり出します」(山崎氏)
Chocotle(チョコトル)のネーミングは「チョコッと撮る」から。森氏は、このChocotleを将来的にYouTuberのような存在ができるプラットフォームにしていきたいと語ってくれた。
「ヤフーにはtextreamやYahoo! 知恵袋といったユーザーが作り上げるコンテンツがある。これらとChocotleを連携することで、動画投稿の裾野が広がると思う。最近は将来になりたい職業でYouTubeで生計を立てる"YouTuber"になりたいという子もいると聞く。そのような存在ができるほど流行るよう、クリエイターに対するアプローチも強化していきたい」(森氏)
「Vineやツイキャスなど様々な動画コンテンツが流行っていますが、撮ってすぐにアップできる動画の魅力に触れてもらいたい。YouTubeは、『ネットで動画を見る』という概念を作り上げた存在。そういう感じで見てもらえるようにしたいし、ユーザーを魅了しているという面ではYouTubeに勝たないといけない、そう思います」(山崎氏)