東芝は、高性能プロセッサ向けに1MBクラスの新方式磁性体メモリSTT-MRAM回路を開発したと発表した。
詳細は、6月10~12日(現地時間)にハワイにて開催される「2014 VLSI Technology シンポジウム」で発表される。
プロセッサの消費電力は、マルチコア化に伴い、内部にあるキャッシュメモリ(SRAM)の容量増大とともに、メモリの消費電力が支配的となってきている。特に、メモリ内部の漏れ電流(リーク電流)に起因する電力が問題だった。この問題を解決するために、現在利用されている揮発性メモリを不揮発メモリに変えることが期待されている。
東芝では、磁性体メモリであるSTT-MRAMの開発を進め、単体素子レベルで、プロセッサのキャッシュメモリに必要な高速動作と低消費電力化を実現してきた。しかし、キャッシュメモリに必要なメガクラスの大規模なメモリ回路として、RAM回路を高速動作用に設計すると回路にリークパスが残り、リークパスをなくすと動作速度が遅いという二律背反の問題があった。さらに、素子のプロセスばらつきに起因した読み出しエラーが大きいという、2つの課題が残されていた。
そこで今回、新たなSTT-MRAMメモリ回路を開発し、2つの課題を同時に解決することに成功した。具体的には、MRAM単体素子であるMTJを2個用いたデュアルセル型のメモリ回路設計を採用し、リーク電流パスを無くしつつ、MTJの抵抗が相補的になるようにして読み出し、かつエラー時にはMTJを1個ずつ読み出すという新しいエラー訂正の機構を追加した。
これらの結果から、プロセッサシミュレータを用いて計算すると、ハイエンド向けマルチコアプロセッサの高容量キャッシュメモリに適用した場合、従来のプロセッサに対して性能劣化が無い状態のまま、消費電力を60%削減できる。つまり、電力性能が従来の約2.5倍に向上することになる。この電力性能は、SRAM以外のあらゆるキャッシュメモリと比較して、世界最高の性能になるという。
今回開発した磁性体メモリ技術は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のノーマリオフコンピューティング基盤技術開発プロジェクトにて進められている。今後、これまで開発した新型磁性体メモリ素子と回路をさらに改良し、プロジェクトの最終年度である2015年度までに、消費電力を1/10に抑えることが可能な不揮発キャッシュメモリ技術の開発を目指すとコメントしている。