しっとりと柔らく丈夫で、生体に安全な有機物の電極を、東北大学大学院工学研究科の西澤松彦教授らが開発した。乾燥した状態で保存でき、水分を吸わせると使える。健康管理や診断、治療のため、体に貼り付けるウェアラブルデバイスなどに広く活用できそうだ。6月10日にドイツ科学誌Advanced Healthcare Materialsオンライン版に発表した。
ウェアラブルデバイスは最近、新しい医療機器、体に優しいエレクトロニクスとして期待されている。このデバイスには、生体との電気的な接続を担う電極が必要だが、体に貼り付けてもわずらわしくない柔軟性や安全性、耐久性などが求められる。極薄のプラスチックに柔軟な電気回路を作製する技術が東京大学のグループによって開発され、注目されている。
東北大学の西澤教授らは、水を主成分とするハイドロゲルに電極を併用するアイデアで、生体親和性の電極を考案してきた。しかし、乾燥などで断線したりして、もろくて使いにくかった。この弱点を克服するため、伸び縮みしても断線しない導電性のウレタンゴムを配線材料として、変形に強い丈夫なハイドロゲルを基板の材料にした。
まず、2倍に伸ばしても導電性を保てるウレタンゴムを作製した。これを、変形に強いハイドロゲル(ゼリー)の表面に接合する技術を開発した。この製法で、乾燥と水戻しで体積が変化しても壊れない丈夫なゲル電極が実現した。ゲル内部に3D配線も可能だ。高圧の水蒸気で滅菌できるので、体に装着する場合、安全で衛生的に使える。
このゲル電極は 70%以上が水分であるため、生体にしっとりなじむ。運動したりしても外れないように装着できる。神経や筋肉の活動計測、および通電治療などに役立つ。透明で、操作しやすく、体内埋め込みによる脳・神経機能の補助などにも適している。特許も国内外で申請した。
開発した西澤教授は「電極材料やゲルの組み合わせを工夫して、製法も確立した。しなやかなので、体に貼り付けても使いやすい。ウェアラブルデバイスにぴったりの丈夫な電極で、実用性は高い。多様な生体デバイスにどんどん使ってほしい」と話している