Synapticsとルネサス エスピー(RSP)は6月11日、都内で会見を開き、同日、Synapticsとルネサス エレクトロニクスが発表したRSPの全株式をSynapticsに譲渡することに関する説明を行った。

Synapticsは、タッチパッドやタッチスクリーン技術で有名だが、もともとIntelでIntel 4004の開発などに携わったFederico Faggin氏や、Carver Mead氏などがニューラルネットワーク技術をビジネス化することを目的に設立され、そこから現在のヒューマンインタフェース技術へと発展していった経緯がある。

SynapticsとRSPの概要、ならびに今回の買収の概要

同社の社長兼CEOのリック・バーグマン氏は、「Synapticsの優先課題は3つある」とし、その中でも最優先事項として、企業の成長を掲げ、今回の買収がその成長を加速させるものであることを強調した。また、2つ目の優先課題としては、市場シェアの60%以上を獲得しているノートPC、42%のシェアを獲得しているスマートフォン、ならびにタブレット市場にフォーカスしており、そうした成長が見込める市場に対して、適切な対応を図っていくことを挙げ、RSPが取り扱ってきた中小型ディスプレイドライバICは、そうしたフォーカス市場にマッチしているとする。そして3つ目の優先課題は規模を拡大させること。今回、RSPのエンジニアを統合することで、さまざまな技術の活用を図っていくことが可能になるとする。

「ヒューマンインタフェースソリューションでNo1の企業になることが目標であり、コア市場であるノートPC/スマホ/タブレット分野に対する投資を継続して行っていくことを約束する。それぞれのプラットフォームに対応する製品群が存在しているが、RSPのディスプレイドライバICも今後そこに含まれ、より広い製品群としてカスタマに提供することが可能になる」(同)とのことで、同買収を契機に、リーチできる市場規模は現在の30億ドルから1.5倍となる45億ドルへと拡大し、その市場の成長が続けば、2018年には100億ドル規模にまで拡大する可能性もあるとする。

Synapticsが注力するのはノートPC/スマホ/タブレットの3市場。RSPの買収により、同社が対象とする市場規模は45億ドルとなり、それがそのまま成長していけば、2018年には80~100億ドル規模の市場となることが見込めるとする

また、「ディスクリートタッチコントローラやディスクリートデバイスドライバ製品におけるハイエンドならびにミッドレンジ市場におけるリーダーシップは今後も維持し続けるほか、2社の力を合わせることで、ミッドレンジの下の領域やローエンドの市場に対しても対応していくことが可能になる」とし、両社の技術を組み合わせることでそうしたこれまでリーチできなかった分野へも進出が可能になるとする。具体的には、すでに同社は製品を展開しているが、1チップ上にタッチセンサとディスプレイドライバを実装する「Touch Display Driver Integration(TDDI)」の技術革新を進めることとなる。

TDDI技術を進化させることで、幅広い領域に対応することが可能になる。その進化のためにはRSPの技術が必要であった、というのが今回の買収に至ったSynapticsとしての説明となる

RSPの技術を既存のディスプレイドライバ技術に置き換えることで、さらなる性能向上を図ることが可能となるほか、1チップ化による低コスト化、基板設計の容易化、システムコストの低減などのメリットをカスタマに提供することが可能となり、より価格低下圧力の強いローエンドなどの市場でも競争力を持つことが可能になるというのが今回の買収の背景の1つとなる。

まだ買収が終了していない現時点では不透明なところがあるため、確約はできないと同氏はしつつも、「2016年にはそうしたデバイスがスマホに搭載されることになると思う」とし、買収完了後、かなり早い時点で両社の技術の融合を図っていく予定であることを示した。

また、会見には買収される側であるRSPの代表取締役社長である工藤郁夫氏も同席、「今後は互いに強いところを生かすことで、社会に対して貢献を図っていければ」とコメントしている。

Synapticsとしては、基本となるノートPC/スマホ/タブレットのポジションを強固なものにできることを今回の買収の意義として掲げているが、将来的にはそれら以外の分野に対してもビジネスの機会をうかがっていくとしており、両社の技術が組み合わさった次世代TDDI技術が軌道に乗った後、自動車などの主要3部門以外の領域に対してもアプローチをかけていく可能性があるとしている。

握手を交わすSynapticsのリック・バーグマン氏(右)とRSPの工藤郁夫氏(左)