現在、複雑化するwebサイトの仕組みや多様化するモバイル端末など、環境変化に多くの企業が頭を悩ませている。そこで、世界最大のCDN(コンテンツデリバリネットワーク)事業者であるアカマイのマーケティング本部 プロダクト・マーケティング・マネージャー、岡本智史氏に、企業のWebマーケティング戦略を支えるインフラのあり方について聞いた。
オムニチャネルの3つのカテゴリー把握が大事
まず岡本氏は、「オムニチャネル」というテーマに企業が取り組む際、「まずは3つのカテゴリーについてしっかりと理解することが重要である」と提唱する。
カテゴリー1:EC(マルチチャネル)
オムニチャネルとは、マルチチャネルから進化した形態のため、価格情報や個人情報、物流の状況など、各チャネルごとにばらばらであったものを統合して、マルチチャネルの環境を整えることがベースとなる。
「今や多くの業種・業界で、Webによって売上が上がることは既成事実となっています。ECの右肩上がりな状況は、今後も確実に続くと見られるので、まずはECの基盤をしっかりと構築する必要があるでしょう」(岡本氏)
カテゴリー2:O2O
Webサイトから店舗へと顧客の動線を構築するのがO2Oの趣旨である。例えば自動車業界を例に取ると、Webで顧客の興味をひいても、最終的にサインして購入する場は各ディーラーの店舗となる。ただし最近では、店舗からWebへという顧客の動線づくりも増えてきている。
その理由として、倉庫や店舗に在庫を抱えるコスト面でのリスク削減や、少子高齢化から店舗へ足を運びづらい消費者も増えている実情がある。
カテゴリー3:バックエンド
バックエンドは、ユーザーからは見えない部分のネットワークのあり方についてである。各店舗を介してのリアルタイムな情報提供や、店舗でWi-Fiサービスの提供などを行う場合、必ずネットワークインフラについて考える必要性が出てくるからである。
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こうしたオムニチャネルの3つのカテゴリーを最適なかたちで統合し、コストや回線速度などの課題も解決できるのがCDNである。さらに岡本氏は、CDNの基本的なメリットとして次の4つを挙げる。
1:高速性
企業が提供するWebサイトやアプリケーションが素早く動くことは、非常に重要である。例えば、ECサイトで商品を購入する場合を考えて欲しい。クリック毎に10秒も待たされてしまうようなサイトにみなさんはお金を払おうと思うだろうか?
「当社は世界中(900都市)にCDNを展開していますので、各国のユーザーにとって最もパフォーマンスの高いネットワークを自動的に割り振ることができます。インフラにコストをかけずにグローバルなマーケティング網が構築できます」(岡本氏)
2:オフロード
Webのアクセスは先を読むことが非常に難しい。なのでアクセスのピーク時に瞬時に負荷を分散できることは、CDNならではの強みである。
「キャンペーンを行ったり、テレビで自社製品が取り上げられたりした時に、普段では考えられないほどアクセスが集中します。こうした状態は企業にとって大きなビジネスチャンスのはずですが、サーバーやネットワークが負荷に耐え切れずに落ちたりしてしまったのでは、せっかくのチャンスが大きなリスクへと変貌してしまう」と岡本氏は注意を促す。
3:ユーザーに応じたページの振り分け
キャンペーン実施時などのWebアクセスのピーク時に、CDNではユーザーの属性に応じてアクセス先を振り分けることができる。例えば、特別会員などのユーザーは決算ページに、一般ユーザーはウェイティングページヘといった具合だ。
「とにかくどんなに処理が厳しい時でも決してエラーは出さず、ウェイティングページでもさまざまな情報を出すなど、ユーザーの機会損失を最小限に抑えることが、企業への信頼や好感度の向上につながるのです」(岡本氏)
4:セキュリティ
Webが企業の窓口であり店舗となった今、Webサイトが落ちないこと、改ざんが起きないことはもはや必須事項である。もし自社のWebサイトが攻撃を受けて改ざんされた場合、企業のブランド価値の損失は計り知れない。
岡本氏は言う。「利便性とWebの事業性が上がると、それに伴いWebサイト自体の価値も上がるので攻撃者に狙われやすくなります。リスクとメリットのバランスをいかに取るかが重要なのです」
ここでは、岡本氏の言葉を素に基本的なオムニチャネルの考え方やCDNのメリットについて簡単に触れた。オムニチャネルの具体的な取り組み方法や回避すべき失敗例、最新のグローバル+モバイル展開の手法などについては、2014年6月18日(水)、都内のベルサール神保町で開催される「マーケティングセミナー」での岡本氏の講演で語られる予定だ。
日本のほとんどの企業は、本格的なWeb活用にはまだまだ第一歩の段階にあると言っていい。次の一歩、そして三歩目、四歩目とこれから踏み出していこうというのであれば、ぜひとも岡本氏の当日の話に耳を傾けていただきたい。