和菓子のデザインでかっこいい、美しいと思うかたちのものを教えてください

花や動物、空模様や風景などの季節感を凝縮させる和菓子。職人が繊細な技を駆使して表現するデザインは、小さな存在ながら私たちに大きな驚きや感動をもたらしてくれます。日本の慣習に則ったお菓子でありながら、地方や店によっていろいろな種類があるのも面白いですよね。

そこで今回は、日本在住の外国人20名に「和菓子のデザインでかっこいい、美しいと思うかたちのものを教えてください」と質問してみました。

■伝統的な和菓子が好きです。見た目が素敵。(スウェーデン/40代後半/女性) ■和菓子はすべてデザインがいいです。(アメリカ/30代後半/男性) ■四季の花をイメージした和菓子が美しいです。(中国/30代前半/女性) ■花の形をしたお菓子が特に美しいです。(ポーランド/20代後半/女性) ■お花や月など自然を形で再現しているものが、非常に美的センスが高いと思います。(ロシア/20代後半/女性)

ほぼすべての回答に見た目への高い評価が見られました。茶道の薄茶や濃茶と供される和菓子は、味はもちろん見た目も重要。季節感へのこだわりは特に強く、夏は葛を用いて透明感によって涼を感じさせたり、菊や桜などの花鳥風月を素材の色や質感を利用したりして表現します。回答者のイメージは濃茶用の生菓子かと思われますが、薄茶で用いられる落雁などの干菓子も花や動物などが象られ美しい世界が表現されています。

■丸くて桜色のお菓子。(ベトナム/30代前半/女性) ■桜模様のもの。(ブラジル/50代前半/女性) ■桜の形がいいと思う。(トルコ/20代後半/女性) ■さくらの花の形のまんじゅうがきれい。(韓国/40代後半/男性) ■桜のもの。(インドネシア/30代前半/女性) ■道明寺。(イギリス/40代後半/男性) ■ひなあられがかわいい。(スペイン/30代後半/男性)

1600年代に初めて登場したという桜餅は代表的な和菓子の一つ。春の季語にもなっており、ひなまつりの時期に販売される様子を見たことがある人も多いでしょう。餡入りの餅を塩漬けの桜の葉で包む作り方は同じですが、最終的な形状や材料が関東と関西で違う不思議なお菓子。イギリスの方の回答にある「道明寺」は関西風の別名です。道明寺粉を用いたおはぎに似た形は、こし餡を薄い餅生地と桜の葉で巻いた関東風の「長命寺」とはかなり趣が異なります。ちなみに二代目歌川広重の「江戸自慢三十六興 向嶋堤ノ花并ニさくら餅」や正岡子規の歌など絵画や詩文にも登場する存在でもあります。 また同じ時期に出される「ひなあられ」も和菓子の一種。3種類の色のあられがあり、白は雪、緑は木々の芽、桃は生命を表しています。

■雷門の形をした浅草の饅頭がかわいいです。梅の花や桜の形をした和菓子はおしゃれだと思います。(フランス/30代後半/男性) ■もみじ饅頭と錦玉羹。(シリア/30代前半/男性) ■うさぎ饅頭、ひよこ饅頭、京都の和菓子(イタリア/30代後半/女性) ■鮎のような奇想天外なもの(魚に餡が入っている!)、菊の花など写実性のあるもの。(スリランカ/50代後半/男性) ■花や果物などはかわいく、ドラゴンクエストのスライム饅頭などオリジナルな饅頭もおもしろい。(ドイツ/30代後半/男性)

「饅頭」に関するあれこれ。雷門の形は東京が発祥の人形焼、広島発祥のもみじ饅頭と、地域は違えどカステラ状の生地で餡を包んだ和菓子としては近い存在です。「錦玉羹」は、琥珀羹という別名を持つ甘い寒天。透明な質感を活かして水や夜空などを表現したものが多く、夏場の目を楽しませる美しい存在です。すった山芋を練り込んだ薯蕷や白餡を薄皮で包んでうさぎやひよこ、鮎など動物を象った和菓子は年中問わず購入でき、お土産としても人気です。 ドラゴンクエストのスライム饅頭は和菓子とは違うのですが、饅頭をデザインする素地より生まれたアイデアと考えれば、実はそう遠くない存在なのかも…。

■いちご大福です。(インドネシア/30代後半/男性)

いちご大福は1980年代に登場した和菓子です。どこの店が売り出したのかは未だ謎ですが、和菓子には珍しい組み合わせとして一躍人気となりました。赤い小豆餡や白餡を使う場合、苺のみ、苺と生クリームを入れる場合など店によって作り方はさまざま。苺を丸ごと使用するので冬から春の季節限定商品になることが多いそうです。

移りゆく四季を感じ取る繊細な感性を存分に発揮した和菓子の世界は、われわれ日本人すら感動させる奥深い分野です。見た目も味もよいのに、お茶を引き立てる物として主張しすぎず、強すぎる個性も見せない。そんなわびさびの心や奥ゆかしさを気軽に感じられるものは今や貴重です。たまには美しい和菓子と濃い目のお茶のティータイムなんていかがでしょう。目にも気持ちにも静かな季節感が楽しめてよさそうですよ。