東北大学は6月9日、MRAMの実用化に向けた技術として、酸化と金属錯体反応を同時に実現する装置を開発することで、これまで困難だった遷移金属や磁性体膜の高精度で超低損傷なエッチングに成功したと発表した。
同成果は、同大 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)、および流体科学研究所(IFS)の寒川誠二教授らによるもの。詳細は、6月9日~12日に開催される「2014 International Symposium on Technology and Circuit」で発表される。
フラッシュメモリ、DRAMなど、従来のメモリがメモリセル内の電子を用いて記録を行っているのに対し、MRAMは記憶媒体にHDDなどと同じ磁性体を用いたメモリ技術である。SRAMの高速アクセス性、DRAMの高集積性、フラッシュメモリの不揮発性など、各種メモリの備えるすべての強みを実現する"夢のメモリデバイス"として、省エネや瞬停にも寄与する汎用性の高いデバイスとして期待されている。しかし、MRAMデバイスにおける最も大きな問題の1つに、記憶媒体に使われる遷移金属や磁性体膜の加工の困難さがある。遷移金属は揮発性に乏しく、物理的なエネルギーでスパッタリングする以外に加工できないため、微細化・高集積化が困難だった。
そこで、研究グループは東京エレクトロンと共同で、寒川教授が独自に開発した中性粒子ビームを用いた酸化・金属錯体反応による遷移金属、磁性体膜の化学反応エッチングを提案し、タンタル(Ta)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)などの遷移金属やNiFe磁性体膜を室温レベルで加工することに成功した。また、同プロセスは基板への紫外線照射量や電荷蓄積量を抑制でき、低温プロセスであることから、磁性体に対する損傷も同時に解決できる利点も有しているという。研究グループでは、同プロセス技術がMRAMの微細化・高集積化の道を拓くものとして、画期的な成果であるとコメントしている。