シスメックスと凸版印刷は6月9日、凸版印刷の子会社である理研ジェネシスにそれぞれが出資し、「個別化医療」における遺伝子検査事業の発展に向けた相互協力を行っていくことで合意したと発表した。

患者それぞれに対し、最適な医療を提供する「個別化医療」を実現するには、患者個人の病態進行や薬剤効果の判定をする遺伝子検出技術や検出された遺伝子の解析を行う「バイオインフォマティクス」が必要となる。

理研ジェネシスは凸版と理化学研究所(理研)、ならびに理研ベンチャーキャピタルが共同で、個別化医療の実用化促進を目指し、2007年に設立したもので、これまで、先端遺伝子解析技術やバイオインフォマティクスを活用した遺伝子受託解析サービスや製品を提供してきた。

また、凸版としても同社をライフサイエンス事業の中核に位置付け、がん化の原因となる体細胞遺伝子の変異を迅速、簡便に検出できる遺伝子解析システムを共同で開発するなどの個別化医療の実用化に向けた研究開発を進めてきた。

一方のシスメックスも、個別化医療実現に向けた検体検査技術プラットフォームの拡充を目指し、2013年にデジタルPCR技術を保有するInosticsを買収したほか、研究機関や大学・医療機関とのオープンイノベーションによるバイオマーカー獲得などを進めてきており、今回の合意は、そうした両社が遺伝子解析技術による個別化医療の実現という方向性で一致したほか、それぞれが保有する技術のシナジーが期待できることなどからなされたという。

同合意に基づき両社は、遺伝子検査に求められる技術プラットフォームを拡充し、短期的には理研ジェネシスとシスメックスの保有する製薬企業とのコンパニオン診断薬開発案件のパイプラインを活用することで、日本発のコンパニオン診断の世界展開を目指すとするほか、中長期的には、バイオマーカーの発見から実用化にいたるまでの各ステージにおける遺伝子検査に対するさまざまなニーズに柔軟に対応するとともにシームレスに連携させ、価値の高いバイオマーカーを新たな検査法として医療の現場に提供していく計画としている。

なお、今回の資本提携により、理研ジェネシスの出資比率は凸版が63.2%、シスメックスが36.5%、理研ベンチャーキャピタルが0.3%となるという。