日立製作所は6月9日、電子決済における取引データの偽造・改竄を防ぐとともに、より確実な本人確認を実現する、電子決済向け生体署名システムの試作に成功したと発表した。
同システムは、生体情報を秘密鍵として用いる電子署名技術(生体署名技術)を指静脈認証装置に適用したもので、パスワードやICカードを使わずに指静脈情報のみに基づいて決済が行える。
試作システムでは、指静脈情報そのものが秘密鍵となるため、従来厳密な管理が必要だった秘密鍵をユーザーで保存する必要がない。
今回、実際の指静脈データから、生体署名技術に適した揺らぎの小さな特徴データを生成する特徴変換技術が開発された。
この技術は、生体情報など、さまざまな揺らぎのパターンを持つ任意のデータを、L∞距離空間(2つのベクトル間の距離が各要素の差分の最大値で定義される空間)の上で表現される特徴データへと変換する、数学的変換の理論に基づく。
加えて、指静脈認証に関する長年の研究により蓄積してきた指静脈画像特有の揺らぎについての統計的な性質に関する知見を数学的変換に反映させることで、揺らぎをより小さく抑えることに成功した。
開発技術をモバイル端末と組み合わせてクレジット決済を想定したシステムを試作し、評価実験を行った結果、他人受け入れ率100万分の1、本人拒否率0.2%を達成したという。