三井不動産とみらいは6月5日、千葉県柏市にて同月より本格稼働を開始する植物工場「柏の葉第2グリーンルーム」を報道陣に公開した。
同事業は「柏の葉スマートシティ」において、2社が共同で進めてきた新産業創造に向けた取り組みの一環で、6次産業化ファンドという、農林中央金庫や全国共済農業共同組合連合会(JA共済連)などの系統団体が、国と連携して設立した機関から出資を受けた案件の第1弾でもある。植物の生育に必要な環境を人工的に制御し栽培する施設で、1日約1万株の野菜を生産・出荷する。
植物工場に導入した栽培システムは、みらいが提供する「完全制御型水耕栽培システム」で、栽培用人工照明や閉鎖式培養液システム、大気組成分の制御、空調システムなど、すべてをセンサで管理。また、栽培環境以外にも、同社が独自に開発した栽培ソフトを使用することで、栽培精度を高める試みも行われている。
また、植物の生産から出荷までを一貫して行っており、生産された植物は収穫後、同施設内でパッキングされる。収穫は徹底した衛生管理のもと実施され、作業従事者には工場へ入る前の温水シャワーや殺菌された作業着の着用、エアシャワーという3段階のクリーン化が義務付けられている。
植物工場のメリットとしては、「気候変動の影響がないこと」や「病原菌・害虫の被害がないこと」「品質が均一」「安定した価格」「無農薬が可能」などといった点が挙げられるが、その一方で、電力への依存が大きいことが課題となるとのことで、今後、そうした電力問題の解決に対する取り組みなどが求められる可能性がある。
今回の見学会では、柏の葉第2グリーンルームで実際に栽培されたレタスなどの試食も催された。みらいの植物工場で栽培できる植物は、レタスやグリーンリーフ、サンチュ、ルッコラなど約15種以上となる。露地栽培に比べ、硝酸濃度が低く、えぐみや苦味が少ないことが特長だという。
実際にフリルレタスを試食してみたが、畑で栽培された野菜と変りなくおいしく頂けた。驚いたのは、デザートとして「レタスで包んだバニラアイス」が提供されたことだ。口に入れた直後はバニラの味が感じられ、後にレタスの味がやってくる。葉の重なる部分は、少し苦味があるが、レタスよりアイスの風味が強く食べやすいと感じた。
同工場で栽培・パッキングの後、出荷された商品は現在、イトーヨーカドーやドトールに卸され、販売されており、一般消費者向けには、「1パック約180円前後で販売」されているとの説明があった。
また、説明会では、みらい代表取締役社長の島村茂治氏と三井不動産でビルディング事業企画部長を務める小野雄吾氏、千葉大学名誉教授でNPO植物工場研究会理事長の古在豊樹氏が登壇し、事業や工場の説明を行った。古在氏は、「植物工場という技術は、海外展開など多くの可能性がある」とし、「農のある新産業創造都市」の実現に向けた意欲を語った。
なお、みらいはすでに水耕栽培装置を、国内12都道府県・25カ所以上に導入しているほか、2008年から南極昭和基地にも配置している。また、すでにモンゴルに植物工場の輸出を実現しており、島村氏は「どのような環境でも安定して栽培できる」と技術の強みを強調していた。