良品計画では、実店舗とネットショップ、ソーシャルメディア、それにスマホのO2O(Online 2 Offline)を連携したサービスを展開している。そこでは、実店舗とネットの融合が目指されている。
ライフスタイルを彩る様々な製品を取り扱う「無印良品」を展開する良品計画は、「ネットとリアルの融合」をキーワードにデジタルマーケティングへの積極的な挑戦を続けている。ネットショップ、ソーシャルメディアと実店舗を融合するサービスを提供してきた同社では、2013年5月にO2O専用のスマートフォン向けアプリケーション「MUJI passport」の提供を開始。これまでに累計で約180万ものダウンロードを数えるほどの人気を集めている。
実店舗を持つ国内流通業者において、デジタルマーケティングのトップランナーと呼ばれる良品計画。その“仕掛け人”が、同社Web事業部長の奥谷孝司氏だ。同社のデジタルマーケティング戦略の根幹、そしてO2Oやオムニチャネルに挑戦する企業が心がけるべきことなどについて話を聞いた。
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ネットは店舗の敵ではない!
先進的なデジタルマーケティングの取り組みで注目を集める良品計画だが、その推進役であるWeb事業部も最初からO2Oやオムニチャネルに携わっていたわけではない。少し前までの使命は、単にECの売上を伸ばすことにあったという。
「すなわち、私の役割はECショップの店長ですね(笑)。その“店長”に就任した時に感じたのが、実店舗とネットの間に存在している壁でした。店舗側から見ると“ネットは敵”という風潮もどこかありましたから」
しかし奥谷氏は、ネットが決して店舗の敵ではなく、むしろ頼もしい味方であることを社内に説明してまわった。
例えばこのような感じで──「皆さんにも当社のネットストア『MUJI.net』のメンバー宛のメールが送られていますよね?メールで情報を得たお客様のすべてがネットで買い物をするわけではないこともご存知ですよね?むしろその情報をきっかけに来店して買い物をするお客様の方が多いですよね?つまり、ネットによるお客様とのコミュニケーションが、店舗に足を向けるきっかけになっているんですよ!」
もちろん、ネット市場も伸び続けており、ECの売上は毎年拡大している。しかし、売上の9割を占めるのは店舗であり、これからも無印良品の価値を提供するコアとなるプラットフォームは、あくまで店舗であり続けるという考え方だ。
2008年より、通勤しながら大学のビジネススクールでマーケティングサイエンスを学んでいた奥谷氏は、SNSと実店舗を連携する取り組みの実証実験を重ねながら、統計ツールを使ってその効果を分析するなど、その成果をいかんなく発揮していった。こうした試みの結果、MUJI passportに実装された機能の1つに「マイル」機能がある。これは、店舗やネットでの買い物だけでなく、同社が運営するSNSサイト「my MUJI」にアクセスして、商品に関して「ほしい!」ボタンを押したりコメントすることでも、マイルが貯まる仕組みだ。
さらに、フェイスブックやツイッターなどのアカウントとも連携し、それぞれのIDを使えばmy MUJIの会員でなくとも、「いいね!」やコメントなどでマイルを貯めることもできるのだ。
ここではMUJI passportをはじめとした良品計画のデジタルマーケティングの取り組みのほんの一部について紹介したが、その詳細や、奥谷氏が構想中の“今後の具体的な戦略”などについては、2014年6月18日(水)、都内のベルサール神保町で開催される「マーケティングセミナー」で語られる予定だ。
最後に奥谷氏は、これからデジタルマーケティングやビッグデータ活用を検討している企業の担当者に向けて次のようなメッセージを送ってくれた。
「まず覚悟して欲しいのが、組織の中で理解を得るのは大変だということです。デジタルマーケティング、そしてビッグデータに向き合うことの大変さの第一歩はそこにあると言っていいでしょう。1つ注意していただきたいことは、Web解析やEC、メールマーケティングといった事を経験せずに、いきなりアプリケーションを導入してデジタルマーケティングを始めてしまうことです。これではまず失敗してしまうことでしょう。今度のセミナーでは、そうした失敗に陥らないような“ヒント”をぜひつかんでいただければと思います」