アンリツは6月2日、次世代帯無線通信の実現に必須である可変プリセレクタを搭載し、測定周波数帯域が110GHz~140GHzのスペクトラムアナライザを開発したと発表した。

近年の無線通信では、マイクロ波帯のアプリケーションが増加し周波数資源が逼迫する中、十分な帯域幅を確保するためミリ波帯を利用するアプリケーションが増加している。自動車レーダや、IEEE802.11ad、第5世代移動体通信においてもミリ波帯での利用が検討されるなど、次世代無線通信におけるミリ波の重要性はさらに増してきており、測定の重要度が高まっている。

同社では、数年前から100GHzを超えるミリ波スペクトラムアナライザの基礎研究を行ってきており、2011年には、総務省の「電波資源拡大のための研究開発」プロジェクトを受託し本格的な研究開発を開始した。そして今回、100GHzを超える帯域で可変プリセレクタを搭載したスペクトラムアナライザの技術開発に成功した。従来、この周波数帯域では、ハーモニックミキサとスペクトラムアナライザを組み合わせて評価することが一般的だったが、測定系の校正が難しい、十分なダイナミックレンジが得られないなどの問題があった。また、スペクトラムアナライザで電力測定可能な周波数は、国家計量標準器の上限周波数である110GHzに制限されていた。

今回発表された140GHzスペクトラムアナライザは、基本波ミキシング技術により高ダイナミックレンジを実現し、従来ノイズに埋もれて観測できなかった微小信号を測定できる。また、同装置の値付けにおいて、産業技術総合研究所(産総研)と情報通信研究機構(NICT)の共同開発によるDバンド国家計量標準器で評価された高周波電力計を用いることで、140GHzまでの電力測定も可能となった。さらに、この周波数帯では実現が困難とされていた可変プリセレクタを、測定器に搭載することで、従来問題となっていた測定器内で発生する歪みやスプリアスを十分に抑圧した測定が可能となった。

アンリツでは、今後もミリ波分野の測定技術の研究開発に注力し、技術開発をサポートしていくとしている。

アンリツの可変プリセレクタを搭載した140GHzのスペクトラムアナライザ