"純国産クラウド"として着実にユーザーの評価を得ているニフティクラウド。5月14-16日に開催された「第5回 クラウド コンピューティングEXPO【春】」では、同サービスの人気を物語るような展示やセミナーが開催された。
展示内容を振り返りつつ、ニフティクラウドの特徴や新サービスを紹介しよう。
クラウド環境で物理リソースを専有する新サービス
ニフティクラウドはVMwareベースのIaaS型パブリッククラウドサービスだ。国内データセンターから提供される低遅延で高パフォーマンスなサーバを、時間単位の従量課金や月額固定料金で利用でき、データは国外に出さずに管理できる。そして、いざという時に相談にのってもらえる24時間365日対応の電話サポートなど、日本企業ならではの「サービス品質」が人気だ。
スクウェア・エニックスによるソーシャルアプリ「三国志乱舞」や、コクヨの共通業務基盤のクラウド化、JR東日本企画のIC乗車券を活用した販売ソリューションなど、サービス開始以来3000件以上の導入実績がある。
展示ブースは、ニフティのサービスの概要を紹介するコーナー、パートナーとのソリューションを紹介するコーナー、新サービスを紹介するコーナーから構成されていた。注目を集めていた展示のひとつは、6月に正式リリース予定の「ニフティクラウド 専有コンポーネントサービス」だ。
同サービスは、ニフティクラウドと同じデータセンター内に物理的に専有されたハードウェアで構成された環境を構築し、サーバやストレージなどのITリソースを月額で利用できるサービス。こう言うと、専用ホスティングのようにも思えるが、特徴はニフティクラウドの共有環境と連携したシステムが構築できることだ。
例えば、ニフティクラウドと連携して専有環境に機密性の高いセキュリティ環境を確保するなど、パブリッククラウドの俊敏性や拡張性を生かしたシステム構築が可能になる。もちろん、自社で物理リソースを保有する必要はない。初期構築費用は実質的にニフティが負担するかたちになり、それを月額料金でユーザーが利用する。すなわち、パブリッククラウドの費用体系で、物理的に専有されたクラウド環境の構築が可能なわけだ。
ブース説明員によると、メリットは以下だ。
「パブリック、プライベート双方のメリットを生かしたハイブリッドクラウドの構築が可能です。資産はニフティが保有しているので、資産レスでプライベートクラウド環境が構築できます。また、Oracle RACなどの専用ハードウェアをクラウドで利用できます」
サービス提供開始時点で利用できるコンポーネントは、物理サーバとストレージ。機能コンポーネントとしてはまずOracle RACが提供され、ロードバランサなどのネットワークコンポーネントが順次提供される予定だ。そもそもこのサービスはクラウド上でOracle RACを使いたいというニーズにこたえるために始まったものだという。オンプレミスの個別要件への融通性とクラウドの機敏さをハイブリッドにしたようなサービスとなる。6月から正式提供を開始する予定だ。
ネットワーク機能を強化し、オンプレミスとの連携も容易に
最近のニフティクラウドの機能強化としては、もう1つ、ネットワーク機能の強化がある。
2014年4月には中小規模向けの新サービスとして「シンプルVPN」が追加された。シンプルVPNは、VPNを安価で簡単に構築できるようにするサービスで、ニフティが提供する小型のVPN装置「サービスアダプタ(下図)」を設置して利用する。サービスアダプタを自社の拠点などに設置すると、拠点間やニフティクラウドの仮想サーバとの間でVPN接続が簡単にできるようになる。
また2014年秋には、ニフティクラウド上に、オンプレミス環境と同様のネットワーク体系を構築して、L2TPv3/IPsec(※)で接続することができるようになる。これにより、オンプレミス環境に設置したシステムのIPアドレスを変更せずにクラウドに移行可能になり、連携システムの設定変更などの負担を大幅に削減できるという。
※ L2TPv3/IPsec(L2) : インターネットを通じてL2VPN(Layer 2 Virtual Private Network)を構築するための通信方法。インターネット上にVPNを構築するプロトコルL2TPv3(Layer 2 Tunneling Protocol version 3)と、データを暗号化して送受信するためのプロトコル IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)を組み合わせたもの。
ニフティクラウドの魅力とは?
ニフティクラウドでは、サーバ、ストレージ、ネットワークなどのIaaSサービスを基本として、ネットワーク機能、セキュリティ機能、サポートサービスといったさまざまな付加機能を提供している。
機能面で特徴的なのは、テンプレートで運用を自動化するCloudAutomation(β)や、自動フェイルオーバー(VMware HA機能)、基本監視などが、オプションではなく、基本サービスとして提供されることだろう。ネットワーク転送量も10TBまでは無料であり、システム構築時のトータルコストが下がるような工夫がされている。
またニフティクラウドでは、システムインテグレーションに必要な機能をPaaSとして提供している。それが「エンジニアリングパーツ」と呼ばれる「RDB」「DNS」「メッセージキュー」「メール配信」の4つの機能だ。冗長構成のDBサーバを簡単に構築できるRDBや、DR対策として死活監視機能を搭載したDNSは、企業の業務用途に適用する際に要望が多いという。
このほか、セミナー会場では、ニフティクラウドの魅力を伝える講演が行われ、ブースを訪れた参加者が熱心に聞き入っていた。そちらの様子も改めてレポートする。