大成建設は5月30日、稲わらに含まれるセルロースとデンプンから同時にエタノールを製造することで、コストの低減およびCO2の削減が図れる技術を開発したと発表した。
同社は、サッポロビールと共同で、2008年7月から5年にわたり農林水産省補助事業「ソフトセルロース利活用技術確立事業」を実施、その後もバイオエタノールが石油代替の燃料となり得るための自主研究を継続した結果、今回の技術を確立したという。
地球温暖化防止対策のCO2排出量削減を目的とした再生可能エネルギーであるバイオエタノールは、主に米国やブラジルでトウモロコシや砂糖キビなどを原料に製造されていたが、現在では食糧問題と相まって、食糧と競合しないセルロース系バイオマスからの製造が注目されており、大成建設では稲わらを原料に研究を進めてきた。稲わらに含まれる成分のセルロースやデンプンは、糖化・発酵させることでエタノールを製造できる。糖化には複数の方法があるが、少ないエネルギー投入量で糖化できるものとして酵素糖化がある。ただし、この酵素糖化を効率的に行うためには、それぞれの成分に応じた前処理が必要である。
今回、稲わら中に含まれるセルロースからエタノールを製造するための前処理として開発したアルカリ処理が、同じく稲わらに含まれるデンプンにも作用し、デンプンからエタノールを製造するための処理として有効に利用できることを見出した。この作用を活用し、セルロースからエタノールを製造する工程に、デンプンからエタノールを製造する工程を組み合わせ、稲わらを原料としてセルロースとデンプンから同時にエタノールを製造する高効率な技術を開発した。
同技術により、原料の稲わら単位重量当たりのエタノール製造効率を高めた結果、エタノール製造コストは70.7円/L、CO2排出量削減率も52%を実現した。この値はバイオエタノールが石油代替の燃料となり得るための目標値である製造コスト100円/L以下、CO2排出量削減率50%以上という基準を満たしている。
今回の成果を基に、未利用バイオマスである稲わらをバイオエタノールの原料として利用することで、温暖化ガス排出量の削減のみならず、再生可能な国産エネルギーとして大いに貢献が見込まれると説明している。