計測機器大手Agilent Technologiesの日本法人アジレント・テクノロジーは6月2日、同社の超高速液体クロマトグラフ(UHPLC)「Agilent 1290 Infinity LCシステム」の新製品として、オートサンプラ「Agilent 1290 Infinityマルチサンプラ」を発表した。

Agilentのオートサンプラ「Agilent 1290 Infinityマルチサンプラ」

同製品は、多検体への対応の強化と高速化への対応ニーズに対応することを目的に開発されたもので、主にLC/MS(Liquid Chromatography - Mass Spectrometry:液体クロマトグラフィ質量分析法)のフロントLCとしての適用が想定されている。

「Agilent 1290 Infinityマルチサンプラ」の概要

その最大の特長は、従来、384ウェルプレートを2枚(768サンプル)までしか対応できなかったサンプル数を最大で384ウェルプレートを16枚(6144サンプル)まで拡張しつつ、製品幅と奥行きは従来品とほぼ同程度を達成した点。また、ウェルプレートを収納するサンプルホテルは1段高さ、2段高さ、3段高さを自由に組み合わせることが可能で、それぞれ異なるサンプルを搭載し、自動で処理することを可能としている。

最大6144サンプルを一度に処理することが可能

さらに、デュアルニードル技術により、サンプルをつまんでから、次のサンプルに行くまでにかかるインジェクションタイムは従来の30秒程度から5秒ないし10秒程度へと低減しつつ、最大3種類の溶媒を洗浄液としてニードル内部、ニードル側面、そしてニードルシートに対して用いることができ、10ppm以下の低キャリーオーバーを実現したという。ちなみに、デュアルニードルは、2つのニードルで同じ容量を注入することで高速分析を実現できるほか、別々の容量を設定することで、0.1μLから1500μLまでハードウェアの変更なしに柔軟に分析を行うことが可能となっている。

デュアルニードル技術と、最大3溶媒による側面、シートまで含めた洗浄により高速処理と低キャリーオーバーの両立を実現した

このほかオプションとして、従来、ペルチェを後付で付けることで実現していた冷却を、今回はミニコンプレッサモジュールを搭載できるようにしたことで、システムのサイズはそのままに、内部温度4℃の環境を維持できるようにしたという。

加えてソフトウェア側も高速処理に対応することを目的に、どこにどんなサンプルが入っているのかを一目で、メソッドまでわかるようなグラフィカルなツールへと進化。Excelデータから設定データ(メソッド)をインポートすることも可能なほか、他社のマスソフトウェアによるコントロールも8月中旬以降、順次対応が図られていく予定だとしている。

グラフィカルなツールにより、どこのサンプルがどういったものであるか、といったことが一目でわかるようになっている

なお、同製品は国内向けには製薬メーカーのほか、食品や化学分野の企業を中心に販売を行っていくとしており、発売開始1年間で100台の販売を目指すとしている。実際の受注は7月1日より開始され、8月初旬ころからの出荷が予定されている。