既報の通りサーコム・ジャパンは、国内のIoT/M2M市場の普及拡大を目指すべく、宅内IoTゲートウェイの提供を開始すると発表した。

IntelなどもIoTゲートウェイの提供を行うとアナウンスしており、IoTを語るうえでそのゲートウェイの存在が欠かせないものとなりつつある。ただし、IoTという言葉そのものは漠然としすぎて、実際に何を指しているのかは、あらゆる機器がネットワークに接続される、という大前提以外、人や企業によって結構異なっており、混乱を招いている面もある。

サーコムの考えるIoTとは、同社がこれまで提供してきたスマートホームソリューションの延長線上にあるもの、ということで、宅内のM2MやIT機器も含めて接続できるゲートウェイを提供するという判断に至ったという。また、宅外IoTゲートウェイとして車載可能なゲートウェイ端末の提供も海外、特に欧州では進んでおり、中でもeCall(車両緊急通報システム)の搭載が義務化される自動車メーカーなどが興味を示しているという。

ODMメーカーとしてのサーコムが考えるIoTゲートウェイの姿

「ODM専業メーカーである我々が考えるIoTとは、ゲートウェイから下流、つまり家や自動車などにおけるさまざまな機器を接続させること。この分野を手掛ける企業をサポートすることで、国内におけるIoT/M2M市場の事業モデルをいち早く確立させたい」と、同社IPプロダクト部 ビジネスディベロップメントマネージャーで、IoTインキュベーターでもある平尾憲映氏は語る。

インテルやシスコシステムズなどが語るIoTはもっぱらゲートウェイよりも上流、データセンターなどであるが、サーコムはその逆、ゲートウェイよりも下流のさまざまな機器がつながる場所としての家や自動車で、どうやってIoTを実現するか、ということを提案している

ではなぜ同社は宅内ゲートウェイ、つまり商業施設や農業分野、産業分野といった幅広いIoTの適用分野ではなく、家庭の内部の機器を接続させる、ということを第一に掲げたのか。これについて平尾氏は、「技術的にはさまざまな分野への適用は可能だが、情報セキュリティの担保などでかなりコストがかかることとなる。そうした意味では、スマートホームという取り組みをしてきた家庭内という観点を切り口にすることで、IoTというもののイメージが沸きにくいカスタマにもよりわかりやすいものとして提供できるようになる」と説明する。

また、宅内IoTゲートウェイを提供するうえで、3つの点がポイントになるという。1つ目は「セキュリティ」。これまでもODMメーカーとしてホームルーターなどを手掛けてきており、ハードウェアとしてのセキュリティに対するノウハウを活用することで、ゲートウェイよりも先、家の外部に情報が不用意に漏えいすることを防ぐことを担保できるという。2つ目は「マネジメント」。これはエネルギーマネジメントや家電の制御という意味で、スマートホームへの取り組みから続きいているノウハウといったところだ。そして3つ目が「コネクティビティ」。さまざまな通信規格の機器などがIoTゲートウェイには接続されることとなるが、ODMであるがゆえに、サーコム単体ではなく、さまざまなパートナー企業と連携を取ることで、接続性の向上などを図ることが可能になるとしている。

サーコムの宅内IoTゲートウェイの概要とソリューションイメージ

一方の宅外ゲートウェイだが、簡単に説明しておくと、すでにeCallへの対応などを前提にドイツメーカー2社がLTEや3Gのゲートウェイ端末の導入を決めているという。しかし、そうしたeCallの義務化や日本ではまだ議論の域を出ていない話であるし、車内で動画視聴といったニーズは長時間の運転をする必要が基本的にない日本ではあまり大きくなく、そのままのビジネスモデルではカスタマはなかなか受けいれてくれないという。そこで同社が提案しているのが、クルマをLTEホットスポットとすることで、位置情報と組み合わせてさまざまな場所に応じたお得情報などをプッシュ型で配信できるようになるといったことや、カーナビとLTEホットスポットをセットにしたソリューションなどを提案しているという。

またeCall的な緊急通報システムが世界的に搭載されていくことになるという見方から、台湾に工場を持っているというコストメリットを活用することで、ミドルレンジの自動車にもそうした機器を搭載し、ITSと連動させるといったことも考えており、そのデータの活用方法なども検討を進めているという。

車載LTEホットスポットサービスにより、自動車により高い付加価値を付けることが可能になる

なお平尾氏は、「サーコムにはODMベンダとしてIoTゲートウェイの下流部分を幅広く提供できる実績とノウハウがある。それを日本のカスタマに、例えば海外ではこういった利用用途で売れているから、買ってくれ、というのではなく、それを元に日本ではどうやったら売れるのかを二人三脚で考えていける点が強みとなる。そういう取り組みを通じて、初めて安価かつ使い勝手の高いコンシューマが体験できるIoTが提供できるようになる」と日本市場に向けた意気込みを語る。また、「今後、IoTをどうやって広めていくか、という点を考えればセンサを作っていく企業とのコネクションが重要」としており、ODMベンダとそうした技術を持つものづくりベンチャー企業や大学などと組み、どういったセンサやIoTデバイスが必要か、といった仮説を立て、市場の開拓を進めていければとしている。

なお、同社としてもIoTゲートウェイだけでなく、カスタマがセンサなども必要とするのであれば自社で開発・製造も行っていくとのことで、ハードウェアだけでなく、ニーズにマッチしたアプリケーションなどもビジネスの条件さえあえば提供していくアライアンスの体系構築も進めており、そうしたさまざまなアライアンスを通じて、新規案件の実現に向けた体制の強化を図っていく予定だという。

すでに同社としても、カスタマからの要望に応じて何種類かのセンサの提供も行っており、それらとさまざまな無線規格を組み合わせて活用するというノウハウがある。IoTゲートウェイを活用することで、そうしたさまざまな規格のセンサと接続し、総合的にデータを収集するといったことが可能となる