産業技術総合研究所(産総研)は5月23日、厚さ数ナノメートルの有機半導体材料の板状ナノ粒子を連続的に製造する方法を開発したと発表した。
同成果は、同所 ナノシステム研究部門 ナノケミカルプロセスグループの竹林良浩主任研究員、陶究主任研究員、依田智研究グループ長らによるもの。コニカミノルタの高秀雄研究員、池水大研究員と共同で行われた。詳細は、5月22~24日に京都大学 宇治キャンパスにて開催された「ナノ学会 第12回大会」で発表された。
低コストで大面積の有機半導体薄膜を積層する技術が求められている。これまで、有機半導体材料を真空・高温で気化させて基材上に析出させる真空蒸着法や、溶媒に溶解した有機半導体材料を基材に塗布する溶液塗布法により製造されているが、前者は高真空や高温が必要なため高コストで大面積化が難しく、後者は重ね塗りの際に下層が溶解してしまうため積層が難しいといった問題を抱えている。これに対し、有機半導体材料をナノ粒子にし、それが分散した液を用いて成膜する手法が提案されているが、数十ナノメートルよりもサイズの小さなナノ粒子を量産することは困難だった。
同技術は、マイクロミキサと呼ばれる細い混合流路を使って、有機半導体材料の溶液と、有機半導体材料が溶けない液体を急速に混合し、ナノメートルサイズの粒子を析出させるものである。これにより、厚さ数ナノメートルの有機半導体材料の板状ナノ粒子が連続的に得られる。このような薄い板状の有機半導体材料ナノ粒子からなる薄膜を積層することにより、柔軟で薄いディスプレイや照明、有機太陽電池など、有機薄膜デバイスの高性能化が図れると期待される。
現在、得られた板状ナノ粒子の分散液を用いた成膜試験が進られている。今後は、より成膜に適したサイズの板状ナノ粒子や、高濃度の分散液を得るためのナノ粒子化条件の最適化に取り組む方針という。また、有機薄膜デバイスとしての性能評価を行い、5年以内の実用化に向けて開発を進めるとコメントしている。