水産総合研究センターは5月23日、採卵を目的とした大型陸上水槽としては世界で初めてクロマグロが産卵するとともに受精卵の確保に成功したと発表した。

西海区水産研究所まぐろ飼育研究施設の外観

現在、太平洋クロマグロ継続的な養殖業の発展と天然資源管理の観点から、養殖種苗としての天然ヨコワ(全長30cm前後の未成魚)を過剰に捕獲・利用せずに、人口種苗で代替するための技術の開発が急務となっている。

一方、現在の人口種苗は海面生簀で養成された親魚から採卵されており、水温や日長などの自然条件が毎年変動するため、親魚の成熟状況や受精卵の最終成績は不安定という状況がある。

こうした背景から、水産総合研究センターは陸上水槽でのクロマグロ親魚からの計画的かつ安定的採卵を目指すため、長崎県にある西海区水産研究所に完成したまぐろ飼育研究施設において、2013年6月から飼育環境条件(水温と日長)の制御による太平洋クロマグロの養成親魚からの安定採卵技術の開発を行ってきた。

大型陸上水槽中のクロマグロ親魚(3歳魚)

今回、まぐろ飼育研究施設の大型陸上円形水槽2基に63尾ずつ計126尾を収容し、水温・日長条件を環境制御プログラムに基づいた環境条件下で親魚の養成に着手した。

5月16日午後5時50分頃、産卵水温20.2度の状態で、初めての産卵を確認したという。翌朝までに1万5,400粒が採卵され、そのうち受精卵は9,600粒だった。

初回産卵で得られた受精卵。左から、産卵1時間後の受精卵、産卵40時間後の受精卵

5月18日の午前中に卵の孵化は完了し、次世代の孵化仔魚7,840尾が誕生、現在は、DNA解析による親子判別での雌の産卵関与尾数を解析中だという。

得られた孵化仔魚