米SOASTAは5月23日、日本法人「SOASTA International」(以下、SOASTA Japan)を設立したことを発表した。代表はウェブルート 代表取締役社長などを歴任した駒林一彦氏が務める。

SOASTAでアジアパシフィック/日本地域のバイスプレジデントを務めるキャメロン ハンター氏

SOASTAは、Web/モバイルアプリケーション向けのテスト/パフォーマンス分析ツールを提供する企業。2006年に設立された"若い"企業だが、すでに600社超の顧客企業を抱え、2万人以上のモバイル開発者/テスターに利用されている。

2012年のロンドン五輪、今年のソチ五輪では、オフィシャルサイトの公式テストツールとして同社製品が使われている。組織委員会からの信頼を勝ち取り、まだ開催地が決まっていない2024年夏季五輪まで、10年間にわたるアプリケーションテスト契約を締結したという。また、米IDC、米Gartnerの双方のレポートでリーダーポジションに入るなど、多方面から高い評価を受けている。

ソチ五輪では、オフィシャルWebサイトの100%稼働に貢献

3つのテスト/性能分析ソリューション

SOASTAが提供するのは、負荷/性能テストソリューションの「SOASTA CloudTest」、Webサイト向けパフォーマンス分析ツールの「SOASTA mPulse」、モバイル向け自動テストツールの「SOASTA TouchTest」の3製品。

各国のパブリッククラウドを利用して、世界中から一斉アクセス

これらのうち、CloudTestは、実環境に近い環境で負荷をかけられるテストソリューションで、さまざまな国のIaaSを利用して世界各地から一斉にトラフィックを発生させることができる。分散して実行できるため、従来のツールでは1万ユーザー程度が限界だったが、数十万、数百万ユーザー分のアクセスも容易に生成できる。

パブリッククラウドへの自動配備機能を備えており、GUIの管理画面からリージョンを指定するだけで、各国のIaaS/PaaSにてインスタンスを作り、バーチャルユーザーを生成して自社アプリへアクセスさせることができる。現在のところ、AWS、RackSpace、Windows Azure、HP Cloud、GoGridに対応。Google、Dimension Data、IBM SoftLayerへの対応も進めている。

また、テスト結果をリアルタイムに分析できる点も大きな特長の1つ。テストを実行しているそばから、ダッシュボードで結果を確認できる。分析作業は、複数の測定結果を重ね合わせて行うことも可能という。

加えて、テスト実行側のアプリに異常が発生した場合などに備えて「ダイナミックランピング」機能を搭載している。同機能を使用すると、異常を検知した際にテストアプリケーションの進行が自動的に止まり、問題が発生したアプリのリソースを増強するなどの対処を行ってからテスト再開させることが可能になる。これにより、時間のかかる負荷テストをはじめからやり直すという事態を避けることができる。

CloudTestは各種のパブリッククラウドへの配備機能も備える

ユーザが体験する性能とコンバージョンの関係を可視化

一方、mPulseは、経営者やマーケティング担当者を意識したパフォーマンス分析ツール。JavaSciptのビーコンをWebサイトに埋め込むことで、実際にユーザーが体験している性能情報を収集できる。

Google AnalyticsやAdobe SiteCatalystなどの分析ツールと連携させることも可能で、米Walmartなどでは、各Webページの表示時間とコンバージョンレートの関係を視覚的に表示して分析しているという。

米Walmartによる活用事例。Webページの表示速度が1秒を超えるとコンバージョンが大きくと下がっている。「闇雲に性能を追求するのではなく、目標値を論理的に決めることができる」(駒林氏)

モバイルアプリの機能テストを自動化

そして、TouchTestは、Android/iOSに対応した機能テスト自動化ツール。実機を使って操作を記録すると、それを基にテストケースが生成され、さまざまな端末でテストを自動実行できる。バリデーションポイントも自由に設定できるほか、画面操作はオブジェクトレベルでUIパーツ(クラス名やラベルなど)を認識されるためディスプレイのサイズや端末の種類を気にする必要がないといった特長がある。

また、CloudTestと同期させることも可能で、バックエンドの負荷が高いときにモバイルアプリにどのような影響が及ぶかなども確認することができる。

CloudTestとTouchTestを併用したテストも可能

負荷テストの問題を解決

SOASTA Japanでゼネラルマネージャーを務める駒林一彦氏

SOASTA Japanの駒林氏は、特にCloudTestの提供背景について「仮想化環境やクラウド環境が普及した現在では、一昔前に比べてシステムの構成が複雑化しているうえ、スマートデバイスの数も爆発的に増えており、開発者が行わなければならないテストは膨大になっている。一方で開発サイクルは高速化しており、テストにかけられる時間も短縮傾向にある。そんな中、負荷テストは、コストをかけて人力により実施している。しかも、そう簡単には実行できないため、必然的にウォーターフォール形式のようなかたちで、最後の最後のフェーズで実施されていたりする」と解説。そのうえで、SOASTAはこうした諸々の問題を解決するソリューションとして、唯一無二の存在と優位性を強調した。

なお、SOASTA Japanは、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドン、ムンバイ、上海に次ぐ同社6番目の拠点。すでに国内販売パートナーとして、バーチャルコミュニケーションズが名を連ねている。