横浜市立大学は5月19日、有機物による超弾性現象(有機超弾性)を発見したと発表した。

同成果は、同大大学院 生命ナノシステム科学研究科の高見澤聡教授によるもの。詳細は、ドイツの学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版に掲載された。

超弾性とは、擬弾性の一種であり、ゴムなどの普通の弾性とは全く異なる固体材料特性で、結晶構造の変化を介して機械的負荷によって弾性的に形状が変化し、除荷後に元の形状に戻る特殊な性質を指す。超弾性は、これまで合金およびわずかなセラミックスでのみ見い出されていた材料特性であり、最初の超弾性合金の発見からすでに80年以上が経過しているが、有機材料での超弾性は知られていなかった。

今回、有機物で超弾性を初めて見い出されたテレフタラミド結晶は、小さな力で超弾性挙動を示す。結晶に機械的負荷をかけると、異なる結晶相への相転移が生じて結晶は変態する。機械的変形量は、結晶内での異なる結晶相の領域増大を生じさせる。除荷されると異なる結晶相は減少し、変態前の元の形状に完全に戻る。100回まで、この超弾性変形を繰り返す実験では材料疲労は全く見られなかった。超弾性材料はこれまで合金に限定されていたが、今回の成果は化学的手法によって、材料特性制御可能な超弾性材料開発への扉を開くものであるという。

有機超弾性体は、合金と異なり軽量かつ金属元素を含有しない特性がある。今後、自動車部品などの材料の軽量化が求められる復元性を持つ構造材料、接合材、機械部品、微弱な振動吸収材などへの応用や、インプラント(体内埋め込み型材料)などの生体適合性の高い医療材料などへの応用が期待できるとコメントしている。

テレフタラミドの分子構造

テレフタラミド結晶の超弾性。(左)可逆的変態と(右)機械的負荷-変形量サイクル