科学技術振興機構(JST)と東大は、課題達成型基礎研究の一環として東京大学長谷川哲也教授らのグループが金属酸窒化物の薄膜結晶の一部で酸窒化物では初めての強誘電体的な挙動を観察した。

酸窒化物は、金属が酸素と窒素の両方と結合した物質で、酸化物、窒化物に続く新たな電子機能材料として期待されている。しかし、従来法で得られる紛体試料は正確な電気測定が難しく、高品質な結晶の合成が望まれていた。

本研究では、レーザーとプラズマで原材料を気化・活性化して反応させる窒素プラズマ支援パルスレーザー堆積法注を用い、代表的な酸窒化物材料であるペロブスカイト型SrTaO2Nの薄膜結晶を合成することに成功。合成条件を最適化した結果、この薄膜結晶は酸化物や窒化物などの不純物を含まず、さらに薄膜中に強誘電体的な応答を示す微小領域が存在することを明らかにした。このような強誘電体的挙動が観察されたのは酸窒化物では初めてとなる。

SrTaO2Nの薄膜結晶は青色から緑色の可視光を吸収できるため、強誘電体を用いた光センサーや太陽電池に利用することで、変換効率の向上につながる可能性がある。本研究成果は、5月16日(英国時間)発行のオンライン英国科学専門誌「Scientific Reports」に掲載された。

Mエピタキシャル成長による酸窒化物単結晶薄膜の合成