富士キメラ総研は5月19日、クラウドコンピューティングサービスについて、その市場動向と参入ベンダーの企業戦略を調査し、今後の方向性を明らかにし、その結果を「2014 クラウドコンピューティングの現状と将来展望」にまとめて発表した。

調査対象 資料:富士キメラ総研

クラウドコンピューティングサービスの2013年度の市場は、前年度比14.0%増の1兆1,693億円になったという。クラウドコンピューティングサービスは、パブリッククラウドコンピューティング(PaaS/IaaS、DaaS、SaaS)、共同利用サービス、プライベートクラウド(オンプレミス型、ホスティング型)の3つに分類されるが、それぞれが順調に拡大するとみられ、2018年度は、2013年度比で60.3%増の1兆8,740億円になると予測されるという。

クラウドコンピューティングサービス国内市場 資料:富士キメラ総研

パブリッククラウドコンピューティングにおいては、外資系ベンダーが中心に展開するPaaS/IaaS(オートセルフ型)が、市場を急拡大。その一方、国内ベンダーが強いPaaS/IaaS(オーダーメイド型)は、基幹系システムなどでユーザー個別の仕様に対応するニーズを獲得、今後はオートセルフ型とのハイブリッドクラウドの成長も期待されるという。

また、ネットワーク経由でユーザーが必要とするアプリケーションソフトを提供するサービスであるSaaSは、PaaS/IaaSの付加価値サービスとして展開されるケースが増加、DaaSはIaaS上の付加価値サービスの位置付けで需要が拡大すると予測している。

プライベートクラウドは、仮想化・クラウド環境ソリューション、シンクライアント環境構築を提供するサービスで、ユーザーのIT設備を利用するオンプレミス型と、ベンダーが提供するIT設備を利用するホスティング型があり、今後は、ITコストの削減だけではなく、ITガバナンスの強化やBCP対策の一環として、需要は大幅に拡大するとみられるという。

パブリッククラウドコンピューティングサービス国内市場 資料:富士キメラ総研

パブリッククラウドコンピューティングは、PaaS/IaaS(オートセルフ型)、PaaS/IaaS(オーダーメイド型)、DaaS、SaaS(汎用型・特定型)を対象とし、企業の基幹系システムやその補完的な位置付けとしての利用が進み、各サービスが伸長したことにより、2013年度の市場は前年度比28.8%増の3,452億円となった。

また、SaaS(汎用型・特定型)の2013年度の市場は、前年度比22.9%増の2,412億円となったという。汎用型が約80%を占め、メール、グループウェアなど情報系システム向けの成長が目立つ。業種に特化した特定型は、医療、公共システム向けで利用が増加しており、今後はコモディティ化が進む製造、流通などのシステムにおいても採用が増えるとみられ、2018年度には特定型がSaaS市場の約25%を占めると予測されるという。

その他、共同利用サービスの国内市場は、地方銀行、証券会社などの金融機関が全体の90%以上を占める他、官公庁や自治体、医療機関などを主要ユーザーとして、市場を拡大、プライベートクラウドは、統合プラットフォームの構築費用はかかるものの、プラットフォーム基盤の統合、標準化/自動化によるITリソースの有効活用により、中長期的には従来型と比較して20~30%のコスト削減が可能なため採用が増加。2013年度の市場は前年度比13.3%増の5,479億円となったという。