産業技術総合研究所(産総研)は5月15日、少量の添加で効率よく単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を分散でき、光を当てるとほぼ全量を簡単にSWCNT表面から外せる光応答性SWCNT分散剤が、不純物を含んだSWCNTの非破壊的な精製プロセスに適用できることを実証したと発表した。
同成果は、同所 ナノシステム研究部門 スマートマテリアル研究グループの松澤洋子主任研究員によるもの。詳細は、米国化学会誌「Journal of Physical Chemistry C」のオンライン版に掲載された。
SWCNTをはじめとする各種のカーボンナノチューブは、水にも有機溶媒にも分散し難い点が応用上の制約の1つとなっている。SWCNTの半導体型と金属型の分離技術や透明導電膜の作成といったデバイスへの搭載技術において、SWCNT分散化技術の高度化は必須である。
これまで、産総研は光応答性SWCNT分散剤を開発してきたが、今回の分散剤は現在知られている最も高性能なSWCNT分散剤に匹敵する高効率な分散能をもつことを、各種評価法により明らかにした。また、この分散剤は光反応により数時間でほぼ全量を外せることを、熱重量分析により確認した。さらに、この分散技術と超遠心分離を組み合わせることで、SWCNTを非破壊的に精製できることを実証した。これにより、不純物を含むSWCNTサンプルを実験室スケールで簡単に精製できるようになったとしている。