島津製作所は5月15日、トリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)「GCMS-TQ8040」を発表した。また、国内外で使用される農薬約480成分のデータで食品中の残留農薬の分析をサポートし、食の安全に貢献する「Smart Pesticides Database」を同時に発売する。
トリプル四重極型GC-MSは、血液中の薬物や代謝物、食品中の残留農薬の分析、水道水や環境水中の環境汚染物質の検出など、幅広い分野で活用されている。近年、検出したい成分数の増加や微量化に伴い、装置の性能と併せて、操作性の向上や多成分の一斉分析、最適なメソッドの開発サポートなどに対するニーズも高まっている。
同製品は、これらのニーズに対し、新しいファームウェアプロトコルの導入やメソッド作成プログラムの搭載により、高感度・高選択性・高速性能はそのままに、優れた生産性・高い操作性を実現。多成分の一斉分析でも感度が落ちないため、従来機の2倍以上となる400成分以上の一斉分析にも対応でき、これまで複数回に分けざるを得なかった分析も1回で行える。また、条件によっては、分析時間を120分から40分と従来の1/3に短縮できる。さらに、「Smart Database」を組み合わせて利用すれば、測定ターゲットに合わせた専用のシステムとしてMS/MS分析における最適なメソッドを自動で作成でき、煩雑な作業を必要とせずに分析を開始できるという。
具体的には、成分ごとに最適な測定時間を自動設定するメソッド作成機能「Smart MRM」を新たにソフトウェアに搭載した。そして、新しいファームウェアプロトコルを導入し、データ取り込みの効率も向上させている。これらにより、「Smart MRM」で作成したメソッドファイルによって、対象成分の溶出時間帯だけデータを採取するので、多成分一斉分析の場合でも感度を損ねることなく分析することができ、従来機の倍以上の成分数の同時分析が可能となった。従来、400成分の農薬は2~3メソッドに分割して測定されていたが、これらを1メソッドに集約することができる。加えて、分析回数の削減に伴い、時間の短縮だけでなく、メンテナンスの頻度やカラムなどの消耗品の交換回数の減少にもつながるとしている。
この他、制御用のソフトウェア「GCMSsolution」を大幅に改良したことで、ユーザーの視点に立ったスマートな操作性を実現した。メソッド作成をサポートするプログラムや分析パラメータを最適化するためのツールが用意されており、多くのパラメータ設定が必要なMRM分析でも、自動で簡単にメソッドを作成できる。例えば、手作業では5時間近くかかっていたメソッド作成も、わずか10分に短縮できるという。
「Smart Pesticides Database」は、「GCMS-TQ8040」と組み合わせることで、食品中の残留農薬分析専用のシステムとして利用可能。国内外で使用されている農薬約480成分を網羅している他、データベースで設定されている条件以外での使用や新規化合物情報の追加登録などのカスタマイズができる。さらに、「Smart MRM」機能によって分析メソッドを自動作成可能で、分析にかかるコストや時間を削減できる。今後、これまで培ってきた技術を応用し、残留農薬だけでなく、水質分析といった環境分野や医薬品、ライフサイエンスなど、様々な分野でGC-MS本体とデータベースの拡販を図っていくとしている。
なお、価格は「GCMS-TQ8040」が1950万円(本体、PCワークステーション込み、税別)から。「Smart Pesticides Database」は10万円(税別)。