「Microsoft SQL Server 2014」が2014年4月にリリースされ、インメモリ技術を利用した高速なOLTPや分析処理が可能になった。蓄積したビッグデータを活用するために、いかに高速に処理するかがビジネス成功のカギを握るといわれるなか、インメモリ技術は"高速化"の大きなトピックとなっている。

一方で、高速化が進めば進むほど懸念となるのがディスクI/Oのボトルネックだ。CPUやメモリ、ソフトウェアの高速化が行われても、ディスク側の処理が追いついていないため、サーバ性能を出し切れない状態になっているのだ。

こうした課題に早くから取り組んでいるのが富士通だ。同社はこれまで、PCIeフラッシュストレージを使った垂直統合型データベース製品「FUJITSU Integrated System HA Database Ready」やサーバ製品「FUJITSU Server PRIMERGY」などにおいて、Fusion-io社のPCIeフラッシュストレージ「ioDrive2 及びioDrive2 Duo(以下、ioDrive2)」を採用した製品を提供してきた。冒頭で触れたSQL Server 2014のリリースに合わせて、同社が注力している製品に「SQL Server SSD Appliance」がある。

富士通「SQL Server SSD Appliance」のラインナップ

富士通 プラットフォーム技術本部 ISVセンター 部長 荒山一彦氏は、「SQL Server SSD Appliance」の開発コンセプトを次のように話す。

富士通 プラットフォーム技術本部 ISVセンター 部長 荒山一彦氏

「データ活用を行う際に、サーバやストレージの性能問題に直面する企業はとても多いのが現状です。最近はビッグデータがトレンドになっており、データを蓄える、分析する、活用する各フェーズにおいて、スピードが非常に重要になっています。しかし、HDDによる性能向上には限界があります。そこで、高速処理が可能なPCIeフラッシュストレージに注目しました」(荒山氏)

PCIeフラッシュストレージは、NAND型フラッシュメモリをPCI Expressに直結するため、一般的なSSDの数倍、SAS HDDの数十倍の高速化が可能だ。富士通の調査では、SAS HDDと比べて約30倍のランダムI/O性能を示したという。

「さらに、SQL Server 2014のインメモリ機能と組み合わせることで、OLTP/DWHシステムにおける高速なレスポンス処理、大量データ処理を可能にすることができます」(荒山氏)

HDDやSSD外付けFCストレージとのパフォーマンス比較

IDC Japanが今年3月に発表した2013年の国内サーバ市場動向調査によれば、富士通のx86サーバの出荷台数は12万台強で、出荷台数ベースで初めて首位になった。それを裏付けるように、PRIMERGYアプライアンス製品の販売も好調だという。

PCIeフラッシュストレージによる高速DB処理と検証済みモデルによる迅速な導入

富士通 IAサーバ事業本部 IAサーバ事業部 バリューサーバデザイン部 マネージャー 松浦康道氏

「SQL Server SSD Appliance」においても、富士通はPCIeフラッシュストレージとして、Fusion-io社の「ioDrive2」を採用している。

その理由を、富士通 IAサーバ事業本部 IAサーバ事業部 バリューサーバデザイン部 マネージャー 松浦康道氏は、「Fusion-io社はPCIeフラッシュストレージ市場を切り開いたリーディングカンパニーであり、PCIeフラッシュストレージに関するノウハウと安定したサポート体制があることも魅力でした。販売パートナーである東京エレクトロンデバイス様のサポートもあり、安心して採用できました」と説明する。

富士通に「ioDrive2」を提供する、東京エレクトロンデバイス CN営業本部 パートナー営業部 久保貫治郎氏は、富士通との関係を次のように語る。

東京エレクトロンデバイス CN営業本部 パートナー営業部 久保貫治郎氏

「富士通様には、PCIeフラッシュストレージを2年ほど前から採用いただいています。当初はサーバオプションとしてのご提供でしたが、最近はHA Database ReadyやSQL Server SSD Applianceのように、製品に組み込まれて出荷されるようになり、単なる部品メーカーではなく、ソリューションパートナーとして協力させていただいています。フラッシュの用途は今後どんどん広がっていきますので、富士通様と一緒に、お客様にソリューションを提供してきたいと思っています」 (久保氏)

「ioDrive2」は信頼性の面でも、ECC技術で不良ビットを検出、訂正してビットレベルのデータ整合性を維持する機能や、エラー履歴から故障予兆を検知して、最適なタイミングでフラッシュチップを切り離すRAID 5相当の障害復旧機能など、さまざまな独自機能により高い書き込み耐久性を実現している。

PCIeフラッシュストレージの信頼性設計

従来、高速なデータベースシステムを構築・運用する上では、性能劣化を防ぐためにボトルネックがどこかを把握し、いかに回避するかを見極めるため熟練エンジニアの技術やノウハウが必要だった。実際、データ量が増加し、夜間バッチが朝までに終わらないといったケースでは、熟練エンジニアによるデータベースのチューニングがポイントになることも多い。しかし、そうした優秀なエンジニアをいつでも確保できるとは限らない。

荒山氏は、「このようなケースでこそ、事前検証済みアプライアンス製品の良さが生きる」と話す。

「SQL Server SSD Applianceでは、事前に性能設計と検証を行い、I/Oのボトルネックを最小化しています。このため、時間のかかるアプリケーションのチューニングや複雑な物理設計を行わなくても、ハードウェア性能を最大限に引き出すことができます。構築時の設計ミスや手戻りの防止にも役立ちます」(松浦氏)

システム規模に応じて3モデルをラインアップ

SQL Server SSD Applianceのラインナップとしては、小規模「RX200 S8」、中規模「RX300 S8」、大規模「RX500 S7」の3モデルがある。

RX200は365GBのPCIeフラッシュストレージを1台搭載し、データ量は最大200GB、RX300は1.2TBのPCIeフラッシュストレージを2台搭載し、データ量は最大5TB、RX500は2.4TBのPCIeフラッシュストレージを3台搭載し、データ量は最大16TBとなる。

「SQL Server SSD Appliance」の3つのラインナップ

荒山氏は「お客様のデータベースサイズによって最適なモデルを選択できるように、小規模から大規模までのフルラインナップを揃えたのが特長です。SQL Serverのさまざまな機能を1つのサーバに載せ、複数のワークロードをこなせるように設計されています。特定の業種に限らず、ほぼすべての用途で利用することができます」と説明する。

RX200は、SQL Server 2014 Standardがプレインストールされたモデルで、スモールスタートに向けた「コンシューマ製品のような導入のしやすさ」にこだわった製品。RX300とRX500は、OLTPやDWHを1台でこなせるよう、高性能、大容量向けの製品となる。

富士通の検証センターでPoCも可能

また、富士通のIAサーバ事業本部 データセンタープロダクト事業部 コンバージドプロダクト開発部 マネージャー 大塚裕昭氏は、24時間365日のワンストップサービス「SupportDesk 24」や、「SQL Server SSD Appliance構築支援サービス」「Microsoft BI構築支援サービス」など、富士通ならではの付加サービスを提供できるのも「SQL Server SSD Appliance」の大きな特長だと指摘する。

「富士通はこれまで、お客様のニーズや状況に応じてさまざまなデータベース基盤の導入を支援させていただいてきました。長年蓄積されたノウハウを、サポートやサービスに生かしています」(大塚氏)

顧客環境を持ち込んだチューニングや検証を、検証センター「富士通トラステッド・クラウド・スクエア」で行うこともできる。実際に、環境を持ち込んでPoC(Proof of Concept)を行う顧客は多いといい、ほとんどの場合、ディスクがHDDからPCIeフラッシュストレージに変わる効果を体感して、「こんなに速くなるのか」と驚くという。

「SQL Server 2014インメモリ機能を用い、OLTPで、ログの書き込み用途にPCIeフラッシュストレージを使うと、データの伝搬が速くなり、トータルで性能の向上が見込めます。SQL Server SSD Applianceは、こうしたメリットを最大限に引き出すことができる製品です」(大塚氏)

SQL Server 2014をプレインストールしたRX200は7月頃から提供を開始する予定だが、RX300・RX500はすでに利用できる状態だ。どのくらい高速化するのか、ぜひ試していただきたい。