産業技術総合研究所は5月14日、赤外線カラー暗視撮影用の撮像素子をシャープと共同で開発したと発表した。産総研が独自に開発した、暗闇でもカラー動画が撮影できる技術に使える新しい撮像素子で、撮影映像の高精細化などを実現した。産総研ナノシステム研究部門の永宗靖主任研究員、太田敏隆上級主任研究員、計測フロンティア研究部門の時崎高志副研究部門長が研究した。
この撮像素子で、暗視撮影カメラを手のひらサイズまで小型化できる見通しをつけた。さらに、量産による低価格化も可能という。監視・防犯カメラの市場が世界的に急成長する中で、カメラの小型化や低価格化が進み、赤外線カラー暗視撮影技術の適用範囲や新規需要の開拓が期待される。この撮像素子を基に、シャープとナノルクス研究所が2014年度中に、赤外線カラー暗視カメラや赤外線照射装置の製品化を目指している。
赤外線を照射して撮影する暗視カメラでモノクロの動画は現在も撮影できるが、カラーの動画撮影は難しい。産総研はこの数年間、暗闇でも赤外線照射だけでカラー動画を撮影できる技術を開発してきた。しかし、これまで試作した暗視カメラはやや大型で、使いにくかった。そこで、研究グループは、独自の最先端ナノテクノロジーを使い、暗視カメラの小型化につながる実用的な撮像素子の開発に取り組んだ。
今回開発した撮像素子はサイズが10mm×10mmで、暗闇でも5m先まで高画質で滑らかな赤外線カラー動画を撮影、記録できる。この撮像素子を使ったカメラ本体は55mm×60mm×50mmで、重さが約250gと小型、軽量。持ち運びや設置が容易で、多様な用途に使える。
開発チームは「半導体のナノテクノロジーで赤外線カラー暗視用の撮像素子を作った。赤外線照射装置と組み合わせて、カラー動画暗視カメラに使える。暗闇でも、明るいところで見たようなカラー動画を撮影できる時代になった」としている。