東京工業大学(東工大)は5月13日、燃料電池の触媒に使われている白金触媒と同等の性能がありながら、優れた耐久性を持つ多孔性タンタル酸化物(TaOx)ナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒を開発したと発表した。
同成果は、同大大学院 総合理工学研究科の大坂武男教授、Zaenal Awaludin博士研究員らによるもの。詳細は、「Journal of Materials Chemistry」に掲載された。
水素エネルギーの応用では、2009年の家庭用定置型燃料電池の市場投入に続き、2015年には燃料電池車の市場投入が予定されている。燃料に水素、酸化剤に空気中の酸素を用いる固体高分子形燃料電池の電極触媒としては、希少で高価な白金が用いられているが、燃料電池の本格普及には一層の高性能化、高耐久性化および低コスト化が不可欠である。特に、酸素極での酸素還元反応触媒の新材料の開発が求められている。
研究グループが開発した多孔性タンタル酸化物(TaOx)ナノ粒子薄膜でキャップされた白金ナノ微粒子触媒は、従来の白金触媒に比べ、白金の電気化学的に活性な面積が約1/4と小さいにもかかわらず、白金触媒と同等の触媒活性を有する。さらに白金触媒に比べて、耐久性は約8倍高いという。
新触媒が白金触媒に優る高い耐久性を有する理由として、多孔性TaOxマトリックスの中に白金ナノ微粒子が包含されて凝集と溶解が抑えられると考えられ、また酸素還元活性が促進される理由としては、白金表面上の被毒種(OH吸着種など)のTaOxへのスピルオーバー効果の結果として、酸素分子の4電子還元配向吸着が促進されること、白金ナノ微粒子近傍の局所pHの低下、白金ナノ微粒子とTaOxとの電子的相互作用などが考えられるとしている。