国立循環器病研究センター(国循)と九州大学(九大)は5月12日、日本の脳卒診療中専門医の4割が長時間労働や睡眠・休日の不足により「燃え尽き症候群」に該当する状態であることを確認したと発表した。

同成果は、九大大学院医学研究院 脳神経外科学分野の飯原弘二 教授、国循 予防医学・疫学情報部の西村邦宏室長らによるもの。詳細は、専門誌「Circulation」の附属誌「Circulation:Cardiovascular Quality and Outcomes」に掲載された。

欧米では4割前後の医師に燃え尽き症候群の疑いがあることが報告されていたが、これまで日本において、そうした全国規模の調査は行われていなかったという。そこで研究チームは今回、全国の脳卒中治療に携わる脳外科および脳神経内科の専門医2564人について、燃え尽き症候群の客観的指標であるMBIスコアを用いて評価を実施。その結果、41.1%が燃え尽き症候群に該当することを確認したという。

左から会社員、公務員、脳卒中診療医師の燃えつき症候群の割合。縦軸が燃えつき症候群の割合(%)を示しており、青が燃えつき症候群の割合、赤が重篤な燃えつき症候群の割合を示している

中でも長時間労働については、10時間あたり12%燃え尽き症候群が増加し、逆に毎日睡眠時間が1時間増えるごとに20%減少することを確認。また、休日と経験年数の増加が燃え尽き症候群の減少と関係し、生活の質(QOL)の低下や時間外呼び出し、患者数の増加がリスクとなっていることも確認された。しかし、超急性期脳卒中加算を得ている病院に所属している医師では、燃え尽き症候群の割合は脳卒中診療専門医全体より21%少なくなっていることも確認したという。

労働時間/週当たりと燃えつき症候群の割合。縦軸が燃えつき症候群の割合(%)を示しており、青が燃えつき症候群の割合、赤が重篤な燃えつき症候群の割合を示している

平均睡眠時間と燃えつき症候群の割合。縦軸が燃えつき症候群の割合(%)を示しており、青が燃えつき症候群の割合、赤が重篤な燃えつき症候群の割合を示している

今回の成果を受けて、研究チームは、睡眠時間や休日の増加、労働時間の短縮などを図ることで、医師の燃え尽き症候群を減らすことが期待できるとしており、今後の厚生労働省による医療従事者の勤務環境改善に向けた施策につながればとコメントしている。