東京大学(東大)と東京医科歯科大学(TMDU)は5月12日、難治性がんであるスキルス胃がん(びまん性胃がん)のゲノムシーケンシングを実施した結果、新規創薬の標的候補となるRHOA遺伝子の活性化変異を同定することに成功したと発表した。
同成果は東京医科歯科大学(TMDU)・難治疾患研究所・ゲノム病理学分野の石川俊平 教授と東大 先端科学技術センター ゲノムサイエンス部門の油谷浩幸 教授、垣内美和子 大学院生および大学院医学系研究科 人体病理学・病理診断学分野の深山正久 教授らによるもの。詳細は国際科学誌「Nature Genetics」オンライン版に掲載された。
今回の研究では、スキルス胃がん組織からゲノムDNAを取り出し、次世代シーケンサーを用いてゲノム中のタンパク質をコードする部分(エクソン部分)の全配列を決定(全エクソーム解析)。その結果、スキルス胃がん症例の約1/4(87症例中22症例:25.3%)に細胞運動・増殖制御に関わるシグナル分子である「RHOA遺伝子」の体細胞変異が存在することが確認されたという。
さらに研究を進めたところ、この体細胞変異は機能を獲得した活性化変異であり、スキルス胃がんの重要な原因であるドライバー変異であることが判明。この変異遺伝子の機能を阻害すると、がん細胞の増殖が低下することが確認されたとのことで、研究グループでは、これまで有効な治療標的のなかったスキルス胃がんに対して治療標的の候補となるドライバー遺伝子変異を同定できたことは、がん治療の進展に向けて重要な成果であり、今後も引き続き症例数を増やした解析および、治療標的としての妥当性を検討する研究を進めて行く予定としている。