アセンテックが販売する米シトリックス社のリモートPCソリューション「GoToMyPC」がユーザー数を急拡大させている。多数のソリューションがあるなか、ユーザーは1年弱で300社を突破。モバイルやクラウドを背景にした近年のワークスタイルの変化にマッチしたことが背景にあるようだ。そこで、GoToMyPCがウケている理由やソリューションの特徴をアセンテックの担当者に聞いた。
世界シェア73%のリモートPCソリューション
会社や自宅のPCにリモートアクセスするツールのニーズが高まっている。背景にあるのは、タブレットやスマートフォンが普及し、ワークスタイルが変わってきたことだ。普段はタブレットだけを持ち歩き、必要なときに社内の業務ソフトにアクセスしたり、データを取り出したりといった働き方が増えてきたのだ。
「GoToMyPC」は、遠隔地からスマートフォンやタブレットを利用し、インターネット経由で会社や自宅のPC/Macを操作することができるリモートPCソリューションだ。
遠隔地のPCにアクセスする方法については、これまでも数多くのソリューションが提供されてきた。Windowsに標準で備わるリモートデスクトップサービス(RDS)や、社内LANへのVPN接続などがその代表例だろう。コンシューマ向けの無料のPC遠隔操作ソフトも複数出回っている。もっとも、簡単で安全に業務に支障なくPCリモートアクセスを実現することはなかなか難しい。安全性や業務の継続性を重視するとコストがかかる。逆に、簡単さを求めると管理が行き届かなくなる。
そんな中、昨年5月、米シトリックス社が提供する、世界シェア73%というリモートPCソリューション「GoToMyPC Corporate日本語版」の国内提供が開始され、ユーザーを急拡大させている。国内販売を担っているのは、仮想デスクトップの総合ソリューションを得意とする「アセンテック株式会社だ。マーケティング部 部長の岩崎朋之氏は、その反響について次のように話す。
「1年弱で300社以上というスピードで採用が進みました。採用をいただく第一の理由は、高速でシンプルな操作性を持つ点です。動画再生でも、レスポンスの遅れを感じません。実際の動作を見て、その場で採用を決めていただくケースもあります。そのほか、初期費用や保守費用がゼロである点、セットアップ作業がほとんど要らない点、セキュリティや可用性がエンタープライズレベルである点、Mac環境のサポートなどもご評価いただいているポイントになっています」(岩崎氏)
このように、GoToMyPCは、コンシューマ向け製品の使い勝手や導入の手軽さと、エンタープライズ向け製品の信頼性や可用性をともに備えていることが最大の魅力になっているのだ。
クラウドを活用して、便利さとセキュリティを両立
では、GoToMyPCはどのような仕組みで動作するのか?
営業開発部 部長の小山田守氏によると、接続先である会社や自宅のPC/Mac/Windowsサーバ(ホストPC)と、接続元である手元のデバイス(クライアントデバイス)が、クラウド上にあるシトリックスのデータセンターを経由してセキュアなリモートPCアクセスを可能とする仕組みであるという。
接続後は、タブレット、スマートフォン、PCなどのリモートデバイス側に一切の情報を残さず使用することができる。
「機能だけを並べると、他のリモートアクセスツールと大きく変わらないと感じるかもしれません。しかし、実際に使っていただくと違いは一目瞭然です。画面がきれいで、レスポンスが高速です。世界13拠点のデータセンターを使って、この2年近くは100%の可用性でサービスを提供し続けています。また、世界で圧倒的なシェアを持つグローバル・スタンダードのサービスですから、最新OSや最新デバイスへの対応も迅速です」(小山田氏)
セキュリティ機能や管理者機能も充実している。実際にホストPCに接続するまでには、①Webサイトへのログインのほか、②事前に設定しておいたホストPC用のアクセスコードの入力、③さらにWindowsのログインパスワードの入力という3つの認証が必要だ。すべての通信はデータが圧縮され、AES暗号化されている。また、アクセスを許可する時間帯を指定したり、パスワード変更のポリシーを設定したりできるほか、接続できるデバイスのMACアドレス制限や、ワンタイムパスワードや二要素認証への対応も可能だ。
管理者はこれらをポリシーとして設定し、ユーザーや部門部署ごとにきめ細かく運用できるようになっている。たとえば、情報漏洩対策としては、接続中にホストPCのスクリーンを消去したり、キーボードやマウスをロックしたりといった機能、連続未使用時間を見てタイムアウトする機能がある。管理者が許可した特定のユーザーに対し、コピーやペースト、ファイル転送、リモート印刷を許可することもできる。ログイン日時などをリアルタイムに監視する機能も備える。
運用面で興味深いのは、セットアップが簡単なことだろう。セットアップはアプリをインストールするだけでよく、専用の管理サーバなどは必要ない。ポートは基本的にTCPの80、443、8200のいずれか1つを外向きに開けておくだけでよく、NATの設定なども不要だ。Webサイトを一切閲覧しないという企業でなければ、ほぼそのまま利用を開始できるわけだ。Wake-on-LAN機能を追加費用無しに提供しており、停止中またはスリープ中のPCをリモートから起動してGoToMyPCを利用するといったこともできる。価格も1ユーザー年間1万4,400円(ホストPC1台)というシンプルな構成だ。
300社超の導入事例に見る4つのユースケース
実際のユースケースとしては、大きく4つのパターンがあるという。1つは、経営層向けの情報活用ツールとしての使い方だ。タブレットと組み合わせて、外出先から売上データや分析レポートをすぐに確認できるようにする。最新のリモートデバイスだけで外出できて大変好評だそうだ。VPNやRDSを使う場合とくらべて、操作教育に時間と手間がかからないことがポイントだ。
2つめは、エンジニアや現場担当者が設計図などの持ち出しに不適切なデータを現場で確認する際に使うケース。建設業や製造業に多い使い方だが、弁護士や会計士、大学教授といった重要情報を扱うプロフェッショナルの方々もこうした使い方をしているという。
3つめは、オフコンの在庫管理システムなど、専用PCやエミュレータで運用しているシステムをリモートから活用するケース。在庫確認のために、会社に戻らなくても、出先からエミュレータを操作して数字を確認することができるので時間を有効に使うことができるという。
最後は、Mac環境でのデザインやDTP業務に適用するケース。Macユーザーにはこれまで本格的に使えるリモートPCソリューションがあまりなかったそうで、GoToMyPCによってそうしたケースでWindowsと同じようにリモートアクセスできるのは大きなメリットだという。
こうしたユースケースで注目できるのは、セキュテリィや事業継続といった観点に加え、業務の生産性向上や新しいワークスタイルへの対応という観点で採用が進んでいる点だろう。アセンテックによると、17年の歴史を有するソフトウェア受託開発企業で、独自のマイグレーションサービスである「Vinus(ビーナス)」などを提供している「株式会社ジェイ・クリエイション」は、まさにそうした観点に注目して採用を決めた企業だ。
「東日本大震災を機に事業継続性の確保を目的として検討をはじめたそうです。ポイントは、社内に展開していたiPadを使ってリモート勤務できる体制を整備していったこと。これにより、出産や育児中の女性エンジニアが在宅で働いたり、地方の開発パートナーとのコラボレーションが進んだりといったように、新しいワークスタイルの業務改革につながったそうです」(岩崎氏)
GoToMyPC開発運用会社の米シトリックス社は「モバイルは生産性をあげて、人々を幸せにする(A Mobile Workstylemakes people happier and more productive)」と提唱しており、テレワークやクラウドを使ったコラボレーションなどは、今後ますます活用されることが予想される。GoToMyPCは、そうした新しい働き方を支えるソリューションであることは間違いなさそうだ。