富士通は5月9日、広域ネットワークにおいて、SDNによるネットワーク仮想化技術により、サービスごとに最適な通信環境を実現する製品として「Virtuora」シリーズを新たに発表した。

同社では昨年の5月、SDN(Software Defined Networking)の考え方に基づき、ICT基盤全体をネットワークワイドに最適化する新アーキテクチャ「FUJITSU Intelligent Networking and Computing Architecture」を発表。「FUJITSU Intelligent Networking and Computing Architecture」は、データセンター、広域ネットワーク、スマートデバイスという3つのICT領域を、ソフトウェアにより管理制御するためのアーキテクチャだ。すでにこのアーキテクチャに基づいたデータセンター向け製品を発表しており、今回の発表は第2弾で、3つの領域のうち広域ネットワークに向けた製品群となる。

「Virtuora」シリーズを新たに提供

富士通 ネットワークビジネス戦略室 SDN推進室 室長代理 浦田悟氏

富士通 ネットワークビジネス戦略室 SDN推進室 室長代理 浦田悟氏は、広域ネットワークに対するニーズについて、「トラフィックの増加に対する対応、短期間での新サービスの提供、ネットワークの解放という要求があり、さまざまな制御ができるように柔らかくなってほしいというのがニーズだ。今回、「Virtuora」という新しいブランド名で製品を提供し、オンデマンドでの早期のサービスの提供、エンド・ツー・エンドでの品質確保を実現する。今後はNFV、トランスポート、ワイヤレス制御の製品を提供し、広域ネットワーク全体を制御できるようにしていきたい」と述べた。

今回は、広域仮想ネットワーク運用制御・管理ソフトウェア「FUJITSU Network Virtuora NC(以下「Virtuora NC」)、ネットワーク仮想化ノードソフトウェア「FUJITSU Network Virtuora SN-V(以下「Virtuora SN-V」)」を新たに提供するとともに、ネットワーク品質管理ソフトウェア「FUJITSU Network ProactnesII QM(以下、「ProactnesII QM」)」の仮想ネットワーク対応機能を強化する。

広域ネットワークにおける3製品の役割

「Virtuora NC」は、ネットワークの構成情報を集中管理し、サービスごとに最適な通信環境となる仮想ネットワークの構築(最適な経路設計、経路情報の通信機器への設定)を一元的に行う集中管理型ソフトウェア。管理者からの指示により、複数ある経路の中から、サービスごとに最適な経路を自動検索し、即時に切り替える。また、障害発生時にも自動で切り替えを行う。

チューニングは、同社独自の経路設計エンジンによって、中継ノードの段数や確保可能な帯域幅などの情報に基づき決定し、広域ネットワークにおけるファイアーウォールやロードバランサなどの機能を選択し、自動でつなぐサービスチェーニング機能を提供する。

チューンニングに際しては、主要ベンダーのネットワーク機器のコマンドに対応し、自動でコマンドを発行を行う。

さらに「Virtuora NC」は、サービスごとの通信経路情報を分かりやすい画面で可視化する機能も備えている。

「Virtuora NC」の特徴

「Virtuora SN-V」は、IAサーバで動作し、「Virtuora NC」が設定した情報に基づき、仮想ネットワーク制御およびユーザーデータ転送処理を行うネットワーク仮想化ノードソフトウェア。ユーザーデータと制御信号を分離し、VPN機能を提供する。

ソフトウェア処理においては、同社独自の実行制御技術を採用し、「Virtuora NC」による制御に加え、自律的な経路障害監視、および障害検出時の即時切替え機能を備えているほか、「Virtuora SN-V」の制御インタフェースとして、標準プロトコルOpenFlow1.3をサポートしている。

「Virtuora SN-V」の特徴

「ProactnesII QM」は、通信データの動きを分析し、品質劣化の即時検出と問題箇所の正確な特定を行うソフトウェア。今回、品質劣化情報を「Virtuora NC」へ即時通知するインタフェースとネットワーク仮想化方式であるNVGREプロトコル、Q-in-Qプロトコルに対応し、高速データキャプチャーの機能強化を図り、「Virtuora NC」と連携した。

「ProactnesII QM」の特徴

販売価格(税別)は、FUJITSU Network Virtuora NCが1,300万円から、FUJITSU Network Virtuora SN-Vが100万円から、FUJITSU Network Proactnes II QMが377万円から。同社では、2016年度末までに売上120億円を目標に販売を行っていく。

「Virtuora」シリーズの展開計画