ルネサス エレクトロニクスは5月9日、2014年3月期の決算概要を発表した。売上高は前年同期比6.0%増の7380億8800万円、営業損益は前年度の232億1700万円の損失から676億3500万円の黒字へと転換を果たしたほか、経常損益も同268億6200万円の損失から586億2500万円の黒字へと黒字転換を達成し、事前の業績予想を上回る結果となった。一方、純損益も年度下期に黒字化を達成し、通期業績も事前予想よりは上回ったものの、52億9100万円の損失となり、黒字転換とはならなかった。
主力の半導体事業は前年度比10.0%増となる7968億円、事業部別としてはマイコン事業が年間を通じて自動車向けが堅調を維持し、前期比約15%の増収となったほか、汎用向けについても、設備・インフラ投資の活性化、景況感の回復による個人消費増の結果、特に産業、民生を中心に売り上げが増加し、前期比約15%の増収となり、全体として、前年度比15.9%増の3536億円となった。またアナログ&パワー半導体事業は、自動車向けがパワーデバイス、アナログIC ともに年間を通じて堅調を維持し、前期比で20%以上の増収を達成したほか、表示ドライバICもスマートフォン向けが急拡大、汎用向けもアナログICが微減となったものの、パワーデバイスが微増となった結果、同15.9%増の2725億円を達成した。さらに、SoC事業については、自動車向けは、カーナビなど車載情報機器向けが年間を通じて好調で前期比約50%の増収となったものの、民生、通信向けが、注力事業への集中により減収となった結果、同5.0%減の1648億円となったとする。
損益の改善について同社は、円高が是正されたほか、事業・生産構造改革の実行による収益構造の改善などにより、営業利益は黒字化を果たしたとするほか、純損益については、LTEモデム事業譲渡や当社の債権者である一部の大株主による債務の一部免除などにより特別利益を238億円を計上したものの、早期退職優遇制度の実施などの事業構造改善費用を中心とした特別損失を720億円計上したことにより、53億円の損失計上となったとした。
また同社は、2015年3月期第1四半期の業績予想として、売上高2020億円(内半導体売上高は前年同期比3.4%の1960億円)、営業損益は事業・生産構造改革の実行効果などによる収益力の改善により200億円の黒字を見込むとするほか、純損益についても前年同期の39億9000万円の赤字から140億円の黒字へと転換を果たせるものとの見方を示す。
なお、同社代表取締役会長兼CEOの作田久男氏は、「ルネサス エレクトロニクスグループは、社会・産業における役割が大きく、早期に経営を健全化し、社会・産業の発展のために尽くすことが重要な使命だと考えている。そのためには、安定した収益を継続的に確保できる体質となる必要があり、そうした体質変革に向けて事業の選択と集中、構造改革、オペレーションのそれぞれにおいて改革を進めており、事業ポートフォリオの変革を図る中で、売り上げの増加に依存せず、安定した利益を生み出せるよう構造改革を今後も推進していく」とコメント、「マーケットイン志向へ事業ドメインを変革」、「収益志向の組織・仕組みへ変革」、「グローバルな経営・組織体制へ変革」の3つの骨子からなる「変革プラン」を、2017年3月期末までの残り24カ月確実に遂行していくことで、そうした利益体質の実現を目指すとした。
また、事業環境の変化に対する柔軟な対応や中期的な企業成長を図るために、さらなる収益性の向上が必要であるとの考えから、「構造改革による利益率の改善」を実行するとともに、安定的な企業成長に向けた「事業の選択と集中によるさらなる利益成長」の実現へと、生産構造改革の確実な推進および、事業ドメインに合わせた設計リソースの再配置の推進を図っていくほか、課題である当事者意識を、グループ内に徹底するための仕組みや体制の整備も図っていく予定であるとし、「ルネサスの社員は他の会社に比べて優秀で真面目な人間が多いと思っているが、現状は真面目なだけであれば良いという状況ではないため、"真面目ではなく本気"になれ、と言っている。社員に対してそれだけ言うのであれば、もちろん、経営陣にも言っていて、彼らには"本気を超えて狂気"を持て、と言っている。これまでの自分の経験から言うと、おおよそ成功した経営者は凡人に比べて、事業に対して良い意味で狂人的に仕事をしてきていた。社員にはそこまで行けとは言わないが、少なくとも真面目を超えて本気になれと言っている」と、事業を行い利益を出していくという心構えの根底からの変革を進めて行っていることを強調していた。