NECは5月8日、非食用植物資源のセルロースを主成分に用いた高機能バイオプラスチックを、従来の1/10という低エネルギー(低CO2排出量)で合成できる製造技術「2段階不均一系合成プロセス」を開発したと発表した。

同成果は、同社 スマートエネルギー研究所の位地正年主席研究員らによるもの。

今回のセルロース系バイオプラスチックは、木材や藁などが主成分のセルロースに、農業副産物のカシューナッツ殻に由来する油状成分のカルダノールを化学結合することで合成され、熱可塑性、耐熱性、耐水性などに優れるとともに、植物成分率が約70%と高い特徴を持ち、電子機器などの耐久製品への実用化が予定されている。使用したカルダノールには、東北化工と共同で、反応しやすい構造に化学的に変性させた変性カルダノールが利用されている。

また、新たに開発した「2段階不均一系合成プロセス」では、従来のように原料のセルロースを有機溶媒に溶解(均一系)させず、ゲル状に有機溶媒で膨らませた状態(不均一系)にした上で、変性カルダノール(長鎖成分)と酢酸(短鎖成分)を2段階で結合させて樹脂を合成する。このため、溶液からの沈殿分離などによって生成樹脂を容易に回収できる。同プロセスは、ほぼ常圧・中温(100℃以下)での反応条件を達成するとともに、従来の均一系プロセスで必須であった生成樹脂を分離するための溶媒が不要となるため、合成に必要な溶媒量を従来プロセスに比べて約90%削減できる。これらにより、従来の約1/10の製造エネルギー(CO2排出量)で、高機能なセルロース系バイオプラスチックの製造が可能になることから、将来量産を行う際には、製造コストの大幅な削減が期待される。

NECでは、同技術を用いたセルロース系バイオプラスチックの量産化を2016年度中をめどに目指し、電子機器をはじめ、他の様々な耐久製品に展開していきたいと説明している。

セルロース系バイオプラスチック(カルダノール付加セルロース系樹脂)の開発。原料と樹脂のモデル構造