基幹システムや業務システムを支えるデータベースのあり方が変わってきた。フラッシュメモリーを様々な用途で活用した、新しいアプローチのデータベースシステムが次々と登場している。これは、ビジネスの現場で起こる変化にいち早く対応できるよう、企業がより高速で信頼性の高いシステムを求めるようになっているためだ。
そんな中、最新のアーキテクチャーを備えたPCIe型フラッシュストレージを搭載し、ミッションクリティカル領域での利用を実現した高性能・高信頼な垂直統合型データベースシステムを展開するのが富士通だ。
富士通といえば、大規模な社会システムなど、高い性能と信頼性が求められるインフラ構築に経験とノウハウを持つ企業。同社は、2014年2月に、「FUJITSU Integrated System HA Database Ready SX2」(以下、「HA Database Ready」)を発表した。顧客からの要望を実現した「HA Database Ready」は、基幹系/情報系を問わず、全ての業種で導入が加速している。
「HA Database Ready」は、データベース用ストレージに東京エレクトロンデバイスが国内展開するFusion-io社のPCIeフラッシュストレージ「ioDrive2 Duo」を採用し、従来モデルから性能比で1.5倍、データベース容量は6倍(最大7.2TB)にまで拡張された。
富士通 統合商品戦略本部 統合商品ビジネス推進統括部 統合商品企画部 シニアマネージャー 栗田満二氏は、商品開発の背景を次のように語る。
「一般的に、データベースで最も発生しやすい性能課題は、I/Oボトルネックです。データベース性能を向上させる上で、高性能なCPUや潤沢なメモリを搭載しても、ディスクI/Oのボトルネックが影響し、想定された性能向上が得られない場合があります。そこで、『HA Database Ready』が選択した解決策は、高速なI/Oを実現し非常に高いトランザクション性能を発揮する、PCIeフラッシュストレージの採用でした。さらに、当社独自のノウハウを投入し、最も効率的にSQL実行することで、高性能を実現しました」(栗田氏)
最新のPCIeフラッシュストレージを採用し、富士通のノウハウを結集させた「HA Database Ready」は、従来のHDDを使用したデータベースとの比較で20倍以上のスループット性能を持つという。もっとも、新しいデータベースシステムを構築する上では、I/O性能問題以外にも、さまざまな課題がある。
富士通 統合商品戦略本部 統合商品ビジネス推進統括部 統合商品企画部 尾澤一雄氏によると、代表的な課題としては、データベースシステムの冗長構成、データの保全性といった信頼性の確保、セットアップ時間の短縮や業務無停止を前提とした高可用での運用の容易さ、システム異常時からの復旧作業などがあるという。そこで富士通では、「HA Database Ready」の商品開発を大きく3つの観点で進めたという。
「3つというのは、高性能・高信頼であること、すぐに使えること、オープンスタンダードであることです。データベースシステムとしての性能や信頼性を確保しながら、運用を含めたトータルコスト削減を支援します。また、オープンスタンダードなインタフェースを採用することで、さまざまなソフトウェアとの連携性を向上させています」(尾澤氏)
「HA Database Ready」はこれら3つの観点において、富士通のさまざまなノウハウが盛り込まれていることが最大の特長だ。以降にて1つずつ見ていきたい。
富士通のノウハウを投入し性能を存分に引き出す
1つめの「高性能・高信頼に」については、単にPCIeフラッシュストレージを採用するだけでなく、性能を引き出すために富士通のノウハウを投入している点がポイントだ。
もともとPCIeフラッシュストレージは、ドライブベイに搭載されるSATAやSASインタフェースのSSDよりも転送速度が速く、RAIDコントローラを用意する必要がないため、トランザクションレートは速くなる。
もっとも、単にPCIeフラッシュストレージを搭載しただけでは高いOLTP性能は得られないという。栗田氏は、高速化のポイントを次のように解説する。
「ノウハウの1つとして、データファイルやトランザクションログなど、I/Oボトルネックになりやすい部分をPCIeフラッシュストレージに配置しています。これにより、キャッシュヒット率が低くても、大量のトランザクションやバッチ処理を高速に実行できます。リカバリーに利用するアーカイブログは、コミットとは切り離し、非同期でストレージユニットに書き込みます。このように、ソフトウェア側で、資源による配置先と処理方法を使い分け、OLTP性能の高速化とデータ保全の信頼性を両立しています。また、シーケンシャルアクセスとランダムアクセスを同等のコストとしてアクセスプランを作成できるよう、データベースのオプティマイザを最適化して、ランダムアクセス性能を生かすチューニングを行っています」(栗田氏)
富士通にFusion-io社の「ioDrive2 Duo」を提供する、東京エレクトロンデバイス CN営業本部 パートナー営業部 久保貫治郎氏は、次のように説明する。
「富士通様にはPCIeフラッシュストレージの性能に注目いただき、いち早く採用いただきました。サーバ製品のPRIMERGY、PRIMEQUESTのほか、今回のアプライアンス製品への採用で、エンタープライズ分野への適用が加速している状況です。富士通様が持つ技術で、PCIeフラッシュストレージの性能が存分に引き出されています。採用決定に当たっては、富士通様の厳しい評価試験にて性能面だけでなく、信頼性や運用評価もクリアしております。東京エレクトロンデバイスは、品質の検査などを済ませて納品し、その後、富士通様が構築し、動作検証済アプライアンスとしてお客様に提供します」 (久保氏)
高信頼という点では、サーバやネットワーク等のハードウェア構成を二重化し、ミラーリング技術を使って両サーバ間でデータベースを同期反映させ、万一のトラブルの際にデータベースを瞬時に切り替える機能、データベース資源をストレージに自動バックアップして、データを三重化する機能などを提供している。
すぐに使え、オープンスタンダードに対応
2つめの「すぐに使えること」には、大きく2つの意味があるという。1つは、設置したその日からデータベースが使えるということだ。設計、チューニング済みのため、設置後の作業は、電源投入とネットワーク設定のみでいい。もう1つは、高可用な運用をすぐに始められ、導入後も簡単に運用できることだ。
「それぞれ『スマートセットアップ』、『スマートオペレーション』と呼んでいます。データベースがチューニング済みであることに加え、データバックアップやセキュリティ、外字処理といった、データベースシステムの周辺機能も提供されるため、すぐに運用を開始いただけます。また、GUIによる運用監視や富士通から提供される一括パッチでのアップデートなど、運用も簡単です。さらに、システム異常時の復旧手順についてもワンクリックで正常復旧する事ができる『スマートリカバリー』が提供されています。これらは、システム管理者の作業負荷を大幅に軽減できるものです」(栗田氏)
データベース容量増設についても、保守技術者がPCIeフラッシュストレージの増設作業を完了した後、ディスプレイ画面上のボタンをクリックする操作ひとつで完了するという。また、2台構成のサーバを利用したローリングアップデート(交互にサーバ停止、一括パッチ適用)も自動化している。
3つめの「オープンスタンダード」は、PostgreSQLのインタフェースを提供し、OSSやISVアプリケーションと連携できることを指している(Symfowareインタフェースも選択可)。特に、Oracle Database構文との互換性を強化したことで、既存システムへのアドオンが容易になり、短期間でビジネスの適用範囲を広げることができるという。
「これからのシステムは、『イノベーション創出の貢献』にシフトし、よりお客様の声や利用者の要望をスピーディに反映するために、現場からの意見を尊重して、『新サービスの提供』を繰り返し、改良していく傾向が強まっています。オープンなシステムに対応することは、現場のニーズに柔軟に対応する上で必要なことです。また、ある特定のミドルウェアしか使えないというのは、外部のさまざまなデータと連携していく上でも弊害となります」(尾澤氏)
通常、企業が新規ビジネスを行う際には、アプリケーションとデータベースの設計、運用が必要となるが、「HA Database Ready」であれば、データベースの構築・運用にかかる工数や費用を削減でき、その分を新しい投資にまわすとことができる。また、PCIeフラッシュストレージを搭載することで高速性も兼ね備え、さらに、富士通がこれまで培ってきたミッションクリティカル領域でのノウハウも統合されている。「HA Database Ready」が導入実績と適用範囲を急拡大している理由は、このあたりにありそうだ。
5月15-16日に東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催される「富士通フォーラム2014」では、「HA Database Ready」の製品展示や機能紹介が行われる。また、5月14-16日に東京・有明の東京ビッグサイトで開催される2014 Japan IT Week春の「第16回データストレージEXPO」では、Fusion-ioブースに富士通が協力出展。こちらでも同製品を展示する予定なので、ぜひ、自分の目でご確認いただきたい。