NECは、西日本高速道路(NEXCO西日本)において、SDNを活用した基幹ネットワークを構築したと発表した。NECによれば、道路業界において、SDNを用いたネットワーク基盤の構築は、世界初だという。
NEXCO西日本の交通管制システムや社内業務システムなどの各システムは、これまでシステムごとに専用のネットワークを構築・運用していたため、ネットワーク構成が複雑になり、障害復旧に時間を要していたという。また、巨大災害発生時に道路管制事業を継続する強いネットワーク作りも必要となっていた。
そこで、NEXCO西日本はSDNの活用により、複数のシステムのネットワークを共有化し、全45拠点(高速道路事務所)、総延長約4,000kmの通信ネットワークを柔軟で高度な経路制御により多様なルートで結ぶことで、道路管制センター機能のバックアップや冗長性の確保を可能とした。
具体的には、NEXCO西日本管内の45拠点に、OpenFlowに対応したNECの「UNIVERGE PFシリーズ」を導入。OpenFlow v1.3に対応したProgrammableFlow Controller4台、ProgrammableFlow Switch136台を中核に、新たなネットワークを構成した。そして、ProgrammableFlow ControllerのGUIで全体の物理ネットワークと論理ネットワークをそれぞれ可視化し、集中制御することで、柔軟なネットワーク制御や利用状況に合わせたネットワーク変更を実現する。
各拠点に配置したスイッチ/コントローラは冗長化され、コントローラはメインセンターと遠隔地のサブセンターでデータの同期を行うため、メインセンター被災時にも、サブセンターからネットワークの全体制御を継続できる。
これにより、通信単位(フロー)毎の通信経路やトラフィック量等の通信状態をリアルタイムに把握できるようになり、事前の通信経路制御によってネットワーク上のサービスに影響を与えない運用・メンテナンスや、障害発生時の迅速な復旧作業が可能となる。
また、物理ネットワークと論理ネットワークを分離し、単一の物理ネットワーク上 に複数の仮想テナントネットワーク(VTN)を構成。これにより、IPアドレス体系や通信要件の異なるサービスを個別のVTNに収容し、サービスの独立性やセキュリティを確保したマルチテナントネットワークの構築が可能となっている。
そのほか、本ネットワークは、従来のIPアドレスに依存しない柔軟で高度な経路制御により、各端末設備からの通信を遠隔地の道路管制センターに迅速に切り替え、BCP/DR(Business Continuity Plan / Disaster Recovery)システムの構築を容易にしている。
NECでは今後、道路をはじめとした公共ネットワーク基盤へのSDN導入を進め、災害時の接続継続性が確保された災害対策拠点の構築や路上センサー・車両からの膨大なデータ(ビッグデータ)を収集するM2Mネットワーク基盤への展開も進めていくという。