生成した経路グラフ

富士通研究所は5月7日、GPSなどで測位した軌跡データを分析に適した形にまとめ、人や車の流れを大局的に把握できる軌跡分析技術を開発したと発表した。

GPSや公衆無線LANなどの位置情報を時刻順に並べて生成される軌跡データは、都市計画や交通政策の立案、あるいはマーケティングに活用されている。

交通分野の軌跡分析では、軌跡データに含まれるすべての座標を、それぞれの近くに位置するノードやリンクに対応させることで、あらゆる経路に対して通過した車の数を数えるような基本的な処理が容易になる。しかし、数十メートル間隔で整備されている道路データは細かすぎて、局所的な交通流を多数抽出できる一方、大域的な交通流の抽出が困難だったという。

また、GPSが座標を測位するタイミングはノード上とは限らず、粗い軌跡データから、細かい道路データへの対応づけは複数通りあるため、その優先度を設定することは容易ではなかった。

そこで富士通研究所では今回、軌跡の形状を考慮した類似度に基づいて軌跡データを集約し、大局的な人や車の流れを表現した経路グラフを生成することにより、道路データを用いることなく経路分析のような大局的な交通流分析が可能な技術を開発した。

類似した軌跡データの集約では、曲線の類似度に基づいて、似たような軌跡データを集約することにより、軌跡データを簡約化した経路グラフを生成する。

軌跡データの集約

この技術により、道路が封鎖された時の混雑地点の早期予測や、道路地図がない大規模テーマパーク内の人の流れ、航空機や船舶の航路分析などへの応用が期待されるという。

具体的には、マラソン大会などの大規模イベント開催時に、多くの人が利用する迂回ルートを素早く見つけられ、事前の推奨通行ルートの設定や誘導計画に反映が可能となるほか、道路データが不要なことから、道路地図がない大規模テーマパーク内の人の流れ、航空機や船舶の航路分析などへの応用も可能だという。

富士通研究所は、本技術の実証実験を進め、2014年度中の製品搭載を目指す。