顧客・パートナーと三者一体で本当のWin-Winを成し遂げる
A10ネットワークスは2014年4月17日、ユーザー向けセミナー「A10 Forum 2014 A10がリードするアプリケーションネットワーキングソリューション ~最新のADC、大規模DDoS攻撃防御、SDN/NFV・IPv6移行~」を東京・品川で開催した。
オープニングセッションには、代表取締役社長兼CEO アジア・パシフィックジャパン ヴァイスプレジデントの小枝逸人氏が登壇し、「A10 次なるステージに向けて」と題した講演を行った。
小枝氏はまず、昨年のA10 Forum 2013の来場者数の倍以上の参加者があったことに感謝の意を示しつつ、企業としての成長を誇った。同氏がもう1つ喜んだのは、米A10 Networksが3月21日にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場したことだ。これについても小枝氏は、「世界中のサポートがあったればこそ」と謝辞の言葉を述べた。
「2004年は、皆さんがよく利用するFacebookが誕生した年です。“ある会社”がシリコンバレーで小さな産声を上げた年でもあります」と、小枝氏はA10 Networksの歴史について振り返った。創業者であるリー・チェン(Lee Chen)氏はA10 Networksを設立した際、「真の顧客志向であること」「長期にわたって成長し続けること」を決心したという。
その後もA10は、時代に合わせて最良の製品を投入してきた。iPhoneをはじめとしたスマートデバイスが登場し、トラフィックが爆発的に増えた2007年には、数年かけて開発したアプリケーションデリバリコントローラ(ADC)である「AXシリーズ」を市場に投入した。また、IoT(モノのインターネット)ということばが流行った2013年には、アプリケーションサービスゲートウェイ「Thunderシリーズ」を発表した。
さらに小枝氏は、「すぐれた製品だけでは、会社は成長しない」とし、A10が重きを置いているビジネスエンジンとして『顧客』『パートナーシップ』『グローバルプレゼンス』『カスタマードリブンイノベーション』の4つがあることを紹介した。
「A10 Networksがここまで成長できたのは、顧客と一緒に課題を解決してきたためです。またこの課題解決には、パートナー企業と三者一体になって取り組みました。時代に合った最新のテクノロジーを三者で作り上げることが、“真のWin-Win”の関係だと思っています。これをさらに大きな枠組みとして取り組むため、2013年に『A10 for Green』を立ち上げました」
3つ目のグローバルプレゼンスについて、A10 Networksは、26カ国に拠点を設け、65カ国のユーザーをサポートしている。文化や言語などの地域性に合わせていかなければ、世の中はよくならない、企業は成長しないというのが、小枝氏の主張だ。
そして最後に小枝氏は、顧客と共に革新を起こすことが重要だとし、『大切なものは すべて お客様が教えてくれた。』という言葉を紹介して、「A10 Networksがこれまで、そしてこれからも成功しつづけるには、この言葉からぶれてはいけないと思っています」と述べた。同氏は、この成果が、2年連続でADC国内市場シェアNo.1を獲得したことだとしている。
この目標からぶれないためには、会社としての強い芯(コア)が必要だ。小枝氏は、2013年の自社イベントで社員が協力してボランティア活動を成し遂げ、全員が笑って写っている写真を掲げ、「A10のコアは“これ”です。顧客、パートナー、社員が同じ方向に向かって進まなければ、成功はあり得ません。真の顧客志向と長期の成長を継続することで、“Smile”プラットフォームを作りたいのです」と締めくくった。
新生A10 Networksは今後も成長を続ける
今回のA10 Forumでは、A10 Networksの創設者でありCEOでもあるリー・チェン氏が登壇し、「A New Day. A New Beginning」と題した特別講演を行った。
チェン氏も小枝氏と同様に、ニューヨーク証券取引所への上場について喜びと感謝の意を表し、講演のはじめに「Let's Rock'n Roll!」と軽快な音楽に乗せて、上場パーティの際の写真を紹介した。リズムを取るチェン氏に合わせて、会場からも手拍子が起きたほどだ。
「2014年3月21日のIPOデイは忘れられない日となりましたが、これもひとえに顧客やパートナーの皆さまのおかげです。私たちA10 Networksの“第二章”に突入しました。新たな始まりです」
チェン氏は、冒頭の挨拶に続けて、あらためてA10 Networksの紹介と情報のアップデートを行った。
A10 Networksの収益は、2010年からの4年間で5,500万ドルから1億4,200万ドルへ成長し、年平均成長率(CAGR)は37%という数値を示した。チェン氏は「2014年、2015年も継続していく」と約束した。
「当社は、大手サービスプロバイダーやWebジャイアントと呼ばれるグランドネームの企業を顧客として擁しています。彼らが私たちの製品を求めるのは、パフォーマンスとセキュリティの課題を解決したいためです。そうしたニーズも、10年前から大きく様変わりしています。インテリジェントでスケーラビリティの高い新しいソリューションを求めるようになりました」
同社は、米国のトップキャリアや日本の3大通信事業者を含む世界65カ国で3,000社以上の顧客を有している。特徴的なのは、一度A10 Networksの製品を購入すると、継続的に購入するユーザーが多いことだという。
「LinkedInは過去3年間、12四半期の間に11四半期連続して当社の製品を購入していただきました。上位25社ユーザーは、ある製品を購入すると、80%の確率で次の四半期に追加購入しています。その投資額は、初期購入時の8倍にもなります。それほど満足していただけているということです」
ある製品を購入すると、別の製品の購入を決定するユーザーも多いという。A10 Networksの“ヘビーユーザー”であるマイクロソフトは、2013年の第三四半期に、開発間もない新製品を紹介したところ、すぐに導入を決定したとのことだ。
「私たちの中核を担うACOS(Advanced Core Operating System)には、次世代の斬新なテクノロジーが採用されており、現在のみならず将来にわたってのニーズに応えることができます。大容量でハイパフォーマンス、拡張性と柔軟性にすぐれますが、それだけではありません。私たちのビジネスモデルは魅力的で、ライセンスフィーのいらないオールインワン価格体系を採用しています」
最新のA10 ACOSは、64ビットのマルチコアCPUをサポートし、共有メモリーアーキテクチャを採用している。従来のIPC(Inter Process Communication)アーキテクチャでは複数のCPUコアが情報をコピーし合って同一の処理をこなすのに対し、ACOSでは共有メモリーを“クラウド”のように共用して処理を行う。
その結果として、他社のADC製品と比べても、ハードウェア性能は似通っているが3~5倍のパフォーマンスを得られたという。またCGNは4倍以上、TPSは5倍以上の性能を示したとのことだ。次にチェン氏は、ネットワーク業界のトレンドとして「セキュリティ」と「クラウド/SDN」の2つをあげた。調査機関によれば、DDoS攻撃が非常に増えてきており、その対策が急務である。これに対してA10ネットワークスは、同社初となるDDoS対策専用アプライアンス「Thunder TPS」を2月に発表した。また、高い年間平均成長率を示すことが予想されているSDNに対しても、包括的にサポートしていく意向だ。「当社は、継続的な成長のための投資も重視しています。例えば人材の面では2012年Q4から2013年Q4にかけて、エンジニアスタッフは20%、セールス・マーケティングスタッフは27%の増員が図られています」最後にチェン氏は、継続的な成長のための注力すべきキーワードとして、「テクノロジー」「グローバルなセールス拠点」「顧客」「パートナー」という4つについて取り上げた。
「また私たちは幸運なことに、経験豊富で熟練の経営幹部を擁しています。彼らマネジメントチームと共に、A10 Networksはさらなる成長を遂げることでしょう」チェン氏の講演の最後には小枝氏も壇上にあがり、会場からの質疑応答の時間とのアナウンスがあった。ある参加者から質問があり、小枝氏が答えようとするが、マイクの音が入らない。スタッフと思しき男性がマイクを受け取って確認するが、まったく音が出ない。すると突然軽快な音楽が流れ始め、なぜか男性は怒り出し、チェン氏も小枝氏も面食らう。
何かの事故かと思いきや、これは「Emotion Rise」が仕掛けたフラッシュモブ、サプライズの演出だ。スタッフや参加者に変装していたダンスチームが登場し、会場の手拍子に合わせて楽しい音楽とダンスで会場を盛り上げた。チェン氏の講演は、盛大な拍手で幕を閉じた。