2013年10月に箱根にオープンした「岡田美術館」。地上5階建て延べ床数約7,700㎡という広大な建物に、日本・東洋の陶磁器や絵画などの美術品を常時約350点展示している。箱根周辺にある様々な美術館の中でも最大規模の美術館として誕生した。
同美術館は、実業家の岡田和生氏が「日本で受け継がれてきた美術品を大切に守り、美と出会う楽しさを分かち合い、次代に伝え遺したい」という思いのもとに、約15年の歳月をかけて美術品を収集。美術館の構想から15年の歳月を経て、2013年実現した。今回は、そんな熱き想いが込められた美術館に初潜入。その魅力をご紹介したい。
まずは、アクセスは箱根登山鉄道・箱根湯本駅から伊豆箱根バス・箱根登山バスに乗り換え、およそ20分。最寄の停留所・小涌園からは徒歩2分という立地だ。大型リゾート施設「箱根小涌園・ユネッサン」の斜め向かいに隣接する。クルマでのアクセスの場合は約80台の無料駐車場を完備している。
正面玄関をくぐると、近代的で重厚感ある5階建ての建物がそびえる。地震多発地帯ということもあり、免震構造の剛健な建物ながらも優美な佇まいも感じさせる建築物だ。入場口のセキュリティチェックは海外の美術館や博物館のように厳重で、カメラや携帯電話、飲み物などはロッカーに預ける仕組み。来館の際はそのつもりで荷物を仕分けしやすいようにしておくのがオススメだ。
入場するや否や出迎えてくれるのは、縦12メートル×横30メートルもある巨大壁画「風・刻(かぜ・とき)」。現代日本画家の福井江太郎氏によって構想も含め約5年の歳月をかけて、岡田美術館のために制作された風神・雷神の大壁画で、その迫力と荘厳さで観る人を圧倒する。
巨大壁画のある渡り廊下を抜けると、1階は主に中国と韓国の陶磁器の展示ゾーンだ。5室に分かれた展示スペースに年代順に中国・韓国の古来の陶磁器類を鑑賞することができる。中国の唐から清時代、朝鮮や高麗時代など、それぞれの時代ごとに異なる独特の色遣いや技法などを比べながら鑑賞する楽しみがある。
2階は主に日本の工芸品を展示。縄文土器などの考古遺物から、古九谷、鍋島、有田、京焼など現代も引き継がれている陶磁器、ガラス工芸品などが集められる。いにしえの時代の職人たちの精巧な技術や趣きのある色遣いやデザインは、工業製品が主流の現代にはない魅力を感じさせられる。
3、4階は日本絵画の展示ゾーン。金屏風や襖絵、浮世絵などが、季節や時々のテーマで多数展示されている。狩野元信、俵屋宗達、尾形光琳、喜多川歌麿、葛飾北斎といった歴史や国語の教科書・便覧でも目にする著名な画家たちの作品もあり、「どこかで見たことある画風だな」と気づくので、必ずしも美術に精通していない人でも十分楽しめる展示内容となっている。
最上階5階は、ホールの他に、仏像など仏教美術を展示した一室を設置。仏堂の雰囲気を模した高い天井の一角で、宗教芸術の神秘さを体験できる。
同美術館が所蔵する美術品には、3点の国の重要文化財も含まれる。多数の美術品が展示されているにもかかわらず、テーマごとに巧みに分類され、見る人を飽きさせない構成は見事。特に絵画は、純粋に美術作品としての技術力や芸術性の高さを楽しめるだけでなく、その時代時代の社会や風刺を描いていたり、当時の人々の生活を同時に偲ぶことができ、大変興味深い展示内容となっている。
また、同美術館ならではのユニークなポイントは館外に設けられた“足湯カフェ”。美術館の敷地内にある掛け流しの源泉による足湯スペースを設けて、コーヒーやお茶、ビールなどが注文できるカフェだ。しかも、大壁画の正面に面して設置され、大壁画を鑑賞しながら、館内を巡って疲れた足を休めることができるという、なんとも心憎い仕掛けとなっている。
また、敷地内には約1万5,000㎡の広大な庭園を併設。入場料300円で滝や池などの水景が一体となった自然豊かな庭園を散策できる。今後は館外に飲食施設も設けられる予定だ。
また、現在は企画展示として「再発見 歌麿『深川の雪』」を6月30日まで開催。66年間所在不明となっていた、浮世絵史上最大級の掛け軸画である喜多川歌麿の大作を展示。「品川の雪」(米・フリーア美術館蔵)、「吉原の花」(米・ワズワース・アセーニアム美術館蔵)と並んで、歌麿の「雪月花」三部作の1つとして傑作と称される風俗画を直に見られる貴重な機会だ。
同美術館の広報担当で学芸員の近森愛花さんは「日常からちょっと離れて、箱根で自然と美術とを堪能するのにちょうどいい場所。館内で歩き回って少し疲れた後は足湯でも癒されて帰っていただきたい。何度足を運んでいただいても楽しめるように企画展も年4回実施していく予定です。大壁画は、時間によって陽の射し加減で少し違って見えます。行きと帰りのぜひ2回見てください」とオススメポイントを語ってくれた。
一部の展示品の前にはタッチパネル式のガイドを設置。日・英・中・韓の4ヶ国語に対応し、こども向けガイドもあり作品をわかりやすく解説してくれる |
6月には美術館オリジナルのチョコレートが発売開始予定。ドラマ『失恋ショコラティエ』のチョコレート監修を務めた三浦直樹氏がシェフショコラティエとして就任 |
これからの行楽シーズン、箱根旅行を計画している人は、同美術館はマストで予定に組み込んでほしい。また、予定のない人は、同美術館への訪問を目的に、箱根旅行を検討してみてはいかがだろうか。