飛行機も電動時代がやってくるのか。小型電動飛行機を動かす電気モーターなどのパワーユニットを、九州大学と産業用制御システムメーカーの菱計装(長崎市)が安川電機(北九州市)の協力を得て完成させた。開発したのは、九州大学大学院工学研究院の麻生茂(あそう しげる)教授や谷泰寛(たに やすひろ)准教授らで、4人乗りセスナ機のガソリンエンジンを外して、この電気パワーユニットを載せ、小型電動飛行機に改造した。
その性能を実証するため、大分県央飛行場(大分県豊後大野市)で地上走行する公開実験を5月15日(木)(予備日16、17日)に実施する。開発チームは「地上走行実験を契機に、クリーンな乗り物としての小型電動飛行機への期待と、九州でこのような小型電動飛行機開発の機運を高めたい」としている。
小型軽量で大出力電気モーターと高性能バッテリーの出現で、小型飛行機なら電気だけで飛ばせることが少しずつ可能になり、世界中で小型電動飛行機が開発されつつある。九州大学は2010年に、小型電動飛行機による「エアタクシー構想」を提言し、電動飛行機の開発に乗り出した。長崎県の協力を得て、電動飛行機用のパワーシステムが誕生した。安川電機が製造した電気自動車用のモーター・ドライバー、菱計装が開発したコントローラー、自動車用リチウムイオン電池を組み立てた。
麻生教授によると、小型電動飛行機は外国では既に飛行試験が行われているが、日本では、今回の走行試験が初めてという。地上走行試験では、1人か2人が乗って、電気だけでプロペラを回し、大分県中央飛行場の滑走路上で300~400メートルを走行して、どれだけ加速できるかを調べて、性能を確認する。
麻生茂教授は「今回のパワーユニットは小型機を飛ばせるだけの出力は十分ある。試作機を2、3年以内に飛ばしたい。九州には、アメリカ並みに空港がいっぱいある。小型電動飛行機を普及させる条件は整っており、自動車とともに基幹産業に成長する可能性をはらんでいる。自動車と同様に、小型電動飛行機の時代は必ず到来する」と開発に意欲を見せている。