新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とタイの科学技術省国家イノベーション庁(NIA)が、タイ中部のサケーオ県のキャッサバデンプン製造工場内に建設したバイオエタノールの製造実証プラントが完成し、4月22日に運転を開始した。
キャッサバイモからデンプン(タピオカ)を抽出した後に発生するタピオカ残渣(ざんさ)を原料にエタノールを効率的に製造する技術を確立するのが目的。製造には、山口大学のグループなどが改良して開発した高温発酵酵母を使う。実証運転は2016年2月までの予定。将来は、タイにとどまらず、タピオカの原料となるキャッサバの栽培を行っている東南アジアへの普及を目指している。
この事業は約7億円の予算(このうちNEDOは約5億円)を投じて、タイのNIAと共同で12年から始まった。実証プラントは、年間に未乾燥タピオカ残渣を1000トン処理し、80klのバイオエタノールを生産する。設計や運用はサッポロビールと磐田化学工業に委託した。
タイでは、急速な経済成長でエネルギー不足になっており、バイオエネルギーへの期待が高まっている。NEDOは、世界最大のタピオカ輸出国のタイで、その残渣が利用されないまま、大量に廃棄されているのに着目した。タピオカ残渣は、トウモロコシなどの第1世代のバイオ燃料のように食料用途と競合しない。また、草本や木質類の第2世代バイオ燃料よりも早期に実用化しやすい。このため、1.5世代バイオ燃料と位置づけられる。
タイで排出されるタピオカ残滓は年間200万トンもあり、すべてをエタノールに変換した場合、年間約65.6万kℓ(1800kℓ/日)の製造が可能となり、代替エネルギー利用拡大に役立つと期待されている。NEDOは「タイではタピオカ残滓が大量に出て、処理に困っており、エネルギー事情からも、技術的にも実用化の可能性はある」としている。