アクセンチュア 金融サービス本部 保険グループ統括 マネジング・ディレクター 林岳郎氏

アクセンチュアは4月21日、保険に関する日本の消費者意識調査の結果と、調査から明らかになった消費者トレンドに基づき、保険会社がとるべき施策をデジタルテクノロジーの活用という観点から紹介する説明会を開催した。

金融サービス本部 保険グループ統括 マネジング・ディレクターの林岳郎氏は、生命保険業界と損害保険業界の動向として、成熟した市場で伸びを期待するのが難しく、若者の加入率が低いことを挙げた。

こうした背景を踏まえ、同社は世界11ヵ国で6,135名の保険契約者を対象にオンライン調査を実施した。うち、国内の有効回答数は500名だった。林氏は、同調査から「消費者は事業者が予想している以上にデジタル化している」「消費者はカスタマイズされた商品やサービスを望んでいる」「若年層は最もデジタル化されているが、事業者からのコンタクトは少ない」という3つのキートレンドが明らかになったと説明した。

保険契約者の意識調査から明らかになった3つのキートレンド

アクセンチュア 保険業界スペシャリスト シニア・プリンシパル 大窪章敬氏

「デジタル化」の具体例の1つとして、オンラインでの購入が挙げられた。従来、代理店を介した契約が多かった保険商品だが、今回、回答者の3分の2がオンラインでの商品購入を考えていると回答したほか、4割の回答者がソーシャルメディアサイトに投稿されたコメントが保険商品を選ぶ際に参考になると回答した保険会社のソーシャルメディアでは、苦情やコメントに対する応対など、インタラクティブなコミュニケーションが求められている。

保険業界スペシャリスト シニア・プリンシパルの大窪章敬氏は、「これまでの保険業界のデジタル化は、保全・支払い・運用のフェーズに重きが置かれていたが、これからは商品開発・マーケティング・流通開発・引き受けといったフェーズが重要になる」と語った。

保険会社のデジタル化のオペレーション

2つ目のトレンド「消費者はカスタマイズされた商品やサービスを望んでいる」の例としては、回答者の8割以上が保険料の最適化や個人に合った商品提供を受けるためであれば、保険会社が自身の利用状況や行動に関する情報にアクセスしてもよいと思っていることが紹介された。

損保ジャパンでは、自動車に記録装置を搭載し、記録した走行データを分析して、保険料算定に利用しているという。

成熟した保険業界がシェアを広げていくうえでカギとなるのが、第3のキートレンドである若年層の開拓だ。「若年層は自動車や家屋を所有している割合が低い、中高齢者より病気や死亡のリスクが高くないという特性から、保険加入率が低くなってしまう。ただ、若年層が後に自動車を買った場合など、最初にリーチした保険会社と契約する傾向があるため、若年層を開拓する意義は大きい」と林氏。

例えば、東京海上日動火災保険は、携帯電話やスマートフォンから手続き可能な1日単位で補償する自動車保険「ちょいのり保険」を提供している。この保険は若年層をターゲットとしたもので、彼らが将来、自動車を購入した際に同社の自動車保険に加入してもらうための「囲い込み」というメリットがあるという。

今回の調査で、18歳から34歳の回答者において、モバイル端末の使用率が高く、保険会社を選択する際にソーシャルメディアを重要と見なすという回答が多かったことから、若年層に対しリーチする際に、モバイルやソーシャルメディアでアプローチするのが効果的だという。

林氏は今回の調査の結果を受けて、事業者が取るべきアクションとして、「顧客との接点をクロスチャネルで設計して収益増加を図る」「顧客データを積極的に収集して個別化した商品を開発する」「若年層へのアプローチを積極的かつ戦略的に行う」を示した。