ローランド ディー.ジー.(ローランドDG)は、東京・浜松町にある「東京クリエイティブセンター(東京CC)」の開設1周年を機にスペースの拡張などを行うリニューアルを行い、2014年4月より新たなスタートを踏み出した。

今回のリニューアルは、2013年3月の同センター開設から2014年3月までの1年間で2000人という同社の予想以上の来訪者があったことを受けて、より多くの人に同社のソリューションを活用してもらうことを目指して行われた。

具体的には、これまでのスペース(200m2)に、新たに100m2のスペースを追加。これにより、200m2側をサンプル展示やセミナースペース、ユーザーの交流スペースとして提供し、100m2側を大型看板などのビジネスに向けたオンデマンドの大型インクジェットプリンタ5台を設置した商談スペースとして提供するという切り分けを実現した。

従来、クリエイティブセンターとして開放されていたスペースは、リニューアル後、セミナースペースなども兼ねる空間として提供されており、筆者が訪問した日は、写真家の関口照生氏によるトークショー「「支倉の道」を辿って」が開催されていた(同社は関口氏が撮影を行った日本スペイン交流400周年記念写真展「支倉の道」の協賛企業でもある)。また、スペースの雰囲気は春めいた感じを受けるが、四季に応じて、その模様も変わっていくとのことなので、それぞれの季節に訪れ、その雰囲気の違いを味わってみるのも一興だ

と言っても、セミナースペース側にも同社のUV-LEDインクジェットプリンターシリーズや、素材を直接削り出す「切削造形法」を用いた3次元入出力装置なども、実際に出力されたサンプルと一緒に複数台展示されており、事前に予約して、出力したいデータを提出しておけば、訪問時にその出力されたものをチェックすることも可能だという。

UVプリンタ「VersaUV」が2台設置されているほか、それを用いた各種のサンプルなども展示されている

特に切削加工は、一般的な3Dプリンタが用いる積層造形法に比べて、形状をしっかり出せるほか、削り出しなので材料の選択の幅が広いといったメリット(切りくずがでるといったデメリットももちろんある)があり、工程ごとに展示されているサンプルと実機械と組み合わせてさまざまな用途を提示することが可能となっている。

主に製造業向けに「切削造形法」を用いた3D入出力装置も複数台設置されており、実際に製造されたサンプルを見ながら、自らのデータを削り出してもらうことも可能

また、この切削加工技術は歯科医療にも使われている。2014年4月1日からの診療報酬改定により、ハイブリッドレジンを用いた義歯の一部が保険適用となったのを機に、歯科医用ミリングマシンの受注が急伸。2014年4月時点でほぼ毎日問い合わせをうけるほどの人気ぶりとなっているとのことで、そうした歯科医向けの専門コーナーも用意されている。

大人気機種となっている歯科用ミリングマシン「DWX-50」。同時に5軸(XYZ軸+テーブル台が前後に動く+テーブルを360度回転可能)を制御することで、個人個人で異なる歯の形状を精密に加工することを可能にしている。標準価格は298万円(税別)

こちらはブロック材料、ピン材料に対応し低価格化を実現した歯科用ミリングマシン「DWX-4」。小型ながら同時4軸制御が可能なほか、ATC(自動刃物交換装置)も標準搭載しており、2本の刃物を使い分けることで、粗削りから仕上げ加工まで一貫して行うことができる。標準価格は168万円(税別)

ローランドDGでは、これらの製品群を歯科業界に向けたブランド「Easy Shape」として提供しており、グローバルでも評価が高く、高いシェアを獲得しているという

一方の大型インクジェットプリンタが設置されている側は、今回のリニューアルで設置されたスペース。実際に機械の説明や出力された実物を見ながら商談を行うことが可能な空間という位置づけになっており、こうした2つのスペースを訪れた人たちに活用してもらうことで、「アイデア次第でなんでもできる空間を肌で感じてもらい、そこから、"日本のものづくり、ここにあり"と言った気概を感じてもらえれば」(同社担当者)と、ローランドDGとしても強気の姿勢を見せる。「もし、導入はまだだが、出力を依頼したいという人がいれば、すでにそうしたソリューションを構築しているユーザーの紹介も可能」とするほか、「これできますか? という質問に応えられる技術を常に提供していきたい」と、幅広いニーズに応えていくことを目指しているとのことで、毎月、何らかのイベントやセミナーを開催し、技術相談会では3次元加工の質問に答えたり、どうやったらうまく機械を使いこなせるかといったノウハウ、はたまたすでに機械群を活用しているユーザー同士の交流などを行い、さまざまな「何ができるの?」を提供していければとしている。

商談スペースも兼ねた大型インクジェットプリンタ5台が置かれた空間。実際に街角のビルの屋上にあるような大判に出力されたサンプルや、さまざまな品物に貼り合わせた形のサンプルなどを間近で見つつ、商談を行うことができる

なお、東京以外にもクリエイティブセンターは名古屋や大阪、福岡などにも設置されているが、同社としては、「近くにない人に対してもフェイスブックにて情報を発信しているので、そこを見てもらって、我々のファンになってもらえれば」とするほか、浜松町のクリエイティブセンターは、駅から徒歩6分ほどの場所なので、東京ビッグサイトなどの展示会の帰りなどに、ふらっと寄ってもらって、どういった技術であるかを体験してもらえればとしている。

ローランドDGの東京クリエイティブセンターは、東京・浜松町駅から徒歩6分の住友浜松町ビル1階フロアにある。表の通りからはガラス越しに中の様子を見ることもできる

ちなみに、東京クリエイティブセンターの営業時間は月~金の10時~17時で、土日祝日は休みとなっている。