IaaSやSaaSなどのクラウドを提供するクラウドサービス事業者の価格競争が激化しているが、これは小規模のクラウドサービス事業者にとって大きな脅威になっているという。小規模事業者は買収されたり、サービスを終了したりすることになり、今後市場の統合がさらに進むと調査会社の米IDCが予想している。
IDCの警告は、アジアのクラウド市場に対するものだが世界レベルでみても当てはまる。これによると、3月に大手のクラウドサービス事業者が中核となるサービスの値下げを行っており、これによりベンチャーなど小規模な事業者にとって難しい状況に追い込まれているという。中でも、差別化要素のないベーシックなサービスの提供に終始しているベンダーは脅威にさらされると分析する。
「それなりの数の顧客を抱える小規模なクラウドサービス事業者は、強ければ、規模の大きな事業者に買収されるだろう。強くない場合は存続の危機を迎える。どちらにしても、クラウド事業者の淘汰が進むことになる」とIDCのアジア・太平洋地区担当クラウドサービス・技術のリードアナリスト、Chris Morris氏は述べている。
3月末にはGoogleが「Google Compute Engine」の値下げを行うなど、世界的にクラウドサービスの価格競争が起きている。4月に入り、「Ubuntu」の英Canonicalは価格競争を理由に、オンラインストレージサービス「Ubuntu One」の提供を終了する計画を明らかにしている。
たとえば、Cisco Systemsが3月末に発表した「InterCloud」について、差別化のあるIaaSをベースにクラウドサービス事業者と提携することで、さまざまな業界向けにクラウドを提供するもの、とMorris氏はその戦略を分析する。提携企業は堅牢なプラットフォームを活用してソリューションを実装でき、アプリケーション開発者にもチャンスをもたらすだろうと評価している。
「Googleが企業向けのクラウド提供を本格化させており、大規模な開発者エコシステムを活用する方向に動いている。AWS、Google、Microsoft、Cisco、Oracle、Hewlett-Packardなどクラウドサービス事業者はどこも同じ提携企業を狙って戦っており、提携関係が激しくなるだろう」とMorris氏。
クラウドの導入にあたっては、各事業部門のトップが決定権を握ることが多い。このことから、Morris氏はクラウド事業者がサービスのボリュームと売上を成長させるためには、ビジネス主導のアプリケーションが重要になると助言している。