2001年10月のリリース以来、12年半にわたって多くのユーザーに親しまれてきたWindows XP。だが、4月9日の月例セキュリティ更新をもって、マイクロソフトのサポートが終了した。4月8日に行なわれたWindows 8.1 Updateの記者説明会と、9日のXPサポート終了の記者説明会の模様をレポートする。
多くのユーザーが誤解しがちではあるが、Windows XPのサポート終了は昨日今日と突然発表したわけではない。2007年1月にマイクロソフトが発表した「サポートライフサイクルポリシー」に基づいて告知された期限だ。しかも、当時はWindows XP Home Editionのサポート終了を2009年4月としていたが、利用者が多く残っていたため更に延長した期限でもある。
特にここ1年は周知・啓発活動を日本マイクロソフトとしても重点的に行なっており「移行支援強化期間」として、最新OS搭載PCへの移行促進に業界団体や官公庁と手を組み推進していた。
こうした取り組みをもってしても、全てのWindows XP搭載PCのリプレースは難しく、国内市場では6月末までに592万台、8%半ば程度のWindows XP搭載PCの利用台数が残るようだ。
592万台のうち、法人利用台数が241万台、個人利用台数が351万台となっており、個人利用者が「まだ利用できるから」といったイメージで乗り換えない現状が透けて見える。
しかし、サポートが「月例のセキュリティ更新」で行なわれていたことからわかるように、PCが普通に使える環境であっても、サポート終了によってセキュリティリスクが増大することを忘れてはならない。
サポート終了の記者説明会に登壇した日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長の加治佐 俊一氏は、XPというOSが現在のセキュリティ事情に対応できていない現状を語る。
「2001年は今から考えるとPCのスペックは非常に貧弱。メモリーは64MB、内蔵HDDは20GBという時代だった。ネット環境も常時接続が始まったばかりで、セキュリティソフトを入れて、脆弱性への対応をそれぞれ行なっていれば良かった。しかし、現在はPCを取り巻く環境が大きく変わった。ノートPCであっても大容量メモリを搭載し、SSDというストレージを活用している。日本においてはネット接続環境も、WiMAXやLTEなど、モバイル環境であっても高速通信が整備されている。これはすなわち、PCが常時ネットに接続していることで攻撃されやすくなったともいえる」(加治佐氏)
これに対してマイクロソフトでは、多層防御という考え方をOSに取り入れており、脆弱性の修正や、アンチウイルスだけに頼らないセキュリティのあり方を導入している。また加治佐氏は、攻撃者の傾向も当時とは大きく変わっていることを指摘。
「2001年は愉快犯が多く、いたずら、悪さをすることを目的としていた。13年後の現在、愉快犯ではなく、犯罪者集団がサイバーアタックを行なっている。金銭目当てであったり、サイバー戦争が繰り広げられる世の中になった」(加治佐氏)
XPは最新のWindows 8と比較してマルウェア感染率が21倍高い結果が出ており、継続して利用することにはリスクをともなう。この1年間、官公庁と連携して周知・啓発を行なってきたが、その一方で自治体自身も26万台以上のWindows XP搭載PCが残るなど、予算やシステム連携の都合から置き換えが完全に進まない状況がうかがえる。
マイクロソフトのWindows OSは世界的に普及率が高いことから、XP以降はサポート期間が軒並み10年以上となっている。Windows Vistaは2007年1月30日に発売されたが、サポート終了は2017年4月11日。Windows 7は2009年10月22日発売で、サポート終了が2020年1月14日。現行のWindows 8/8.1は2012年10月26日発売で、サポート終了は2023年1月10日だ。
Windows XP搭載PCの利用者が依然として残る中で、今後の数値目標はあるのかという質問に、日本マイクロソフト Windows本部 本部長 藤本 恭史氏は「社内目標数値だった10%は切れたものの、それで良いかと言われると当然良くないと思う。現時点で今後の目標はないものの、過去のOS利用率推移を見ると時間が経つと自然に0に近付いていく。もちろん、移行推進のための努力は惜しまない」とした。
XPのサポート終了に対する様々な声があるものの、これまでの取り組みや競合OSにはない10年スパンでのサポート体制、そして移行サポート体制を見れば、消費者にとって十分な対応といえるのではないだろうか。