東北大学は4月15日、愛知学院大学、熊本大学との共同研究により、「ヘリコバクター・シネディ(シネディ菌)」という細菌の感染が血管細胞への脂肪蓄積を増加させることで、「動脈硬化症」の進展を促進することを明らかにしたと発表した。
成果は、東北大大学院 医学系研究科の赤池孝章 教授、愛知学院大薬学部の河村好章 教授、熊本大大学院 生命科学研究部の竹屋元裕 教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、4月15日付けで英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
動脈硬化症の進展は加齢や食習慣などさまざまな要因が関わることが知られており、血管の内側にコレステロールなどの脂肪が蓄積することにより血液の流れが悪くなる結果、心筋梗塞や狭心症などの心臓病や脳血管障害などの疾患に深く関与する。しかし近年になって、細菌やウイルスの持続的な感染もその1つと考えられるようになり、注目されるようになってきた。
以前より赤池教授らは、ヒトの動脈硬化病巣にシネディ菌が感染していることを示唆する知見を得ていたという。そこで今回、動脈硬化症のモデルマウスを用いた実験を行い、シネディ菌が感染すると血管への脂肪の蓄積が増加し、動脈硬化症の進展が早まることを証明したという具合だ(画像1)。
シネディ菌とは、1984年に初めてヒトへの感染が明らかになり、発熱、下痢などの比較的軽い症状を引き起こすこと程度だが、感染経路や病原性については不明な点が多かった病原菌だ。赤池教授らは最近になって、シネディ菌感染の高感度な検出・診断法の開発に成功し、健康なヒトにも同菌の保菌者がいることを確認している。
そして培養したマクロファージ細胞を用いた実験においては、シネディ菌が感染した細胞ではコレステロールを細胞内への取り込むタンパク質が増加し、コレステロールを細胞外へ排出するタンパク質が低下することにより、脂肪の蓄積が増加することも解明したのである(画像2・3)。
今後、ヒトにおけるシネディ菌の感染と動脈硬化症の関連についてさらに詳細な研究を推進することにより、ヒト動脈硬化症の新しい予防法・治療法の開発と確立に貢献することが期待されるとした。