京都大学は4月14日、浜松ホトニクスと共同で、次世代半導体レーザ光源として注目される、フォトニック結晶レーザ素子の開発を進め、3度以内の狭放射角を維持したまま、光出力1.5Wというワット級の室温連続動作に成功したと発表した。
同成果は、同大 工学研究科 野田進教授(工学研究科 光・電子理工学教育研究センター長)らによるもの。詳細は、英国の学術誌「Nature Photonics」の電子版に掲載された。
半導体レーザは、これまで波長域の拡大や高速化といった、波長軸、時間軸での性能向上により、特に情報通信、光記憶分野において広く使われてきた。今後、光技術は情報通信や光記憶だけでなく、製造技術、医療技術、生命科学への展開が期待されるが、このような応用においては、従来の半導体レーザでは十分でなかった光出力を軸とした研究開発が重要となる。特に、材料加工を含むレーザを用いた製造技術、すなわち光製造の需要は大きいと言えるという。
研究グループは1999年に、フォトニック結晶と呼ばれる人工的な光ナノ構造を用いることで、ビーム品質の劣化を最小限に抑え、半導体レーザの高出力化が可能になりうるという基本概念を提案するとともに、その基本実証に成功し、新たな可能性、機能性を実現してきた。この間、複数の企業との産学連携研究により、高出力で高ビーム品質、単一スペクトル、高機能性を同時に実現する、フォトニック結晶レーザの具現化と実用化に向けた取り組みを進めてきた。
その中で、2007年度より、浜松ホトニクスと共同で、実用化を見据えたフォトニック結晶レーザの開発に取り組んできた。その結果、光出力200mW(0.2W)のフォトニック結晶レーザの実用化をアナウンスしていたが、今回の研究では、デバイス構造および作製のさらなる高度化を推進することで、ワット級の光出力を有するフォトニック結晶レーザの実現に成功したとする。
今回の成果では、光出力が1.5W(CW)で、ビーム広がり角が3度以内という優れたレーザ特性を達成し、レンズフリーによる集光なしの直接照射により、紙の燃焼のデモができるまでの高密度動作に成功したという。
なお研究グループでは、フォトニック結晶レーザの応用は、光製造以外においても波長変換、光励起、バイオ・分析など、さまざまな分野への波及効果が考えられるとコメントしている。