日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)、NTTナレッジ・スクウェア、放送大学の3者は4月14日、大規模公開オンライン講座(Massive Open Online Courses:MOOC)の提供を開始した。同日よりNTTドコモとNTTナレッジ・スクウェアが運営する「gacco(ガッコ)」と、放送大学が運営するOUJ MOOCで講義が開講された。今後、100大学との提携と受講者100万人を目標にサービスを拡大していく。
両者ともJMOOC公認のMOOCプラットフォーム。gaccoでは東京大学 本郷 和人教授による「日本中世の自由と平等」が、OUJ MOOCでは放送大学 岡部 洋一学長による「コンピュータのしくみ」、山田 恒夫教授と国際交流基金による「にほんごにゅうもん(英語版)」の2講義が開講され、大学の講義を誰でも無料に受講できるMOOCとしては日本初の事例になるという。
MOOCは、インターネット上で高等教育を受けられるサービス。米国を中心に2012年から主要大学と著名な教授によるオープンオンライン講座が公開され、グローバルで1000万人以上が受講している。Googleが2014年1月に発表した「Google検索キーワードにみる教育業界のトレンド」ではMOOCなどのサービスが今後成長すると予測しており、大学が優秀な学生を発掘するツールとしての試みも行われている。
単に学習コンテンツを一方向に配信するのではなく、学習理解度をオンライン試験や課題提出によって測り、また、フォーラムを利用した受講者同士が互いに学べる環境をあわせて提供するといった特徴がある。授業内容がインターネットで配信されることから、ユーザーが自由に時間や場所を選んで学べるといった利便性もある。
日本においても、東大が2013年9月から米Courseraのプラットフォームを利用した英語によるMOOC配信の実証実験を行うなど、ここ最近でいくつかの取り組みが行われている。このような中で今回のgaccoとOUJ MOOCでの講義が開始されたことになる。
gaccoで開講した「日本中世の自由と平等」では、約1カ月の受講期間に、週ごとに約10分の映像を10本ほど見て学習を行い、掲示板で討論を行いながら毎週の課題を提出するスタイルとなっている。今回の講義では有料だが、反転学習の試みも行われ、10000円の受講費で開講期間中にリアルの場でのグループ学習も行う予定となっている。
gaccoの登録者数は現在、約3万3000人。平均年齢は46歳(男性47歳、女性42歳)、男女比は7:3でビジネスパーソンを中心に30代から50代がメインで全登録者の半数が4年制大学卒となっている。「日本中世の自由と平等」の登録者は10000人を超え、講義内容から年齢層としてはやや高めとだという。
gaccoでは開講した講義を含め年内に17大学による19の講義を提供する予定。5月に開講する慶應義塾大学 村井 純教授の「インターネット」や6月の早稲田大学 栗崎 周平准教授の「国際安全保障論」などが受講者を募集中のほか、グロービス経営大学院 教授陣による「経営(マネジメント)入門」、明治大学 氷川 竜介客員教授らによる「マンガ・アニメ・ゲーム論」といった講義も今後、募集が行われる。
OUJ MOOCで開講される講義は、Facebookや電子書籍をベースにしたオンライン学習ツール「CHiLO Books」を使用しており、受講者はFacebookグループに参加するかたちで講義を受講する。
同日に都内で開催された説明会でJMOOC 理事長の白井 克彦氏は「本日の開講は、ささやかだが日本の高等教育にとって記憶される日のひとつになるのではないかと思います。MOOCは、既存の枠組みを越えたオープンなものとして、また人類社会の知的基盤を作るのに大いに役立つものとして、世界中で発展していくでしょう。JMOOCもグローバルな視点を持ちつつ、同時に日本の地域社会の活性化や少子高齢化といった問題に取り組むひとつの全体的な知的拠点を形成するための役割を果たしていきたいと思っております」と語った。
また、JMOOC 事務局長の福原 美三氏は「2013年の設立から今日まで、多くの協力を頂き準備をしてきました。本日の開講はひとつのマイルストーン。現時点で18大学が参加していますが、早期に100大学を実現したい。現時点の(gaccoの)登録者数は33000人を超え、これはMOOCの可能性を示す数字です。100大学との連携、そして受講者数100万人をひとつの目標に価値ある環境を提供していく」とした。