富士通は4月11日、東北大学との共同研究で、津波が市街地や河川を遡上する様子を精緻に再現できる三次元津波シミュレーターを開発したと発表した。

今回、東北大学災害科学国際研究所所長の今村文彦教授の開発による、波源から沿岸部までの広域の津波の到達時刻や波高の計算に広く活用されている二次元シミュレーション技術と、同社の三次元流体シミュレーション技術の融合に成功することで、沿岸の地形や市街地の建造物によって津波が複雑に変化しながら市街地や河川を遡上する様子をより正確に再現することが実現された。

今村教授が開発した津波伝播の二次元シミュレーション技術は、沿岸部への津波の到達時刻や波高の計算に広く活用されているが、市街地への浸水や河川遡上を精緻に再現するには、津波の威力や遡上速度に影響を与える建物や堤防の形状などの三次元的な情報の取り扱いに課題があった。

一方、同社の三次元流体シミュレーション技術は、流体を多数の粒(粒子の集まりとして表現する粒子法の採用により、砕波や越流などの三次元挙動の再現が可能であるという特徴を有するが、計算量が多いため、波源から沿岸部までの広域のシミュレーションは難しいという課題を抱えていた。

三次元津波シミュレーターにより、地震に伴って発生した津波の複雑な流れや沿岸部での砕波や越流などの挙動を再現できる。これにより、防波堤を越えて激しく打ち上がり、落下する津波の衝撃力による被害などをより正確に見積もることが可能になると期待される。

(a) 波源から沿岸部までの広域における津波の波高・流速を再現、(b) 沿岸部に流入する津波の三次元的な挙動を再現

計算量の少ない津波伝播の二次元シミュレーション技術を利用して広域の波高・流速などを再現するため、計算量の多い三次元流体シミュレーション技術のみのシミュレーションよりも、再現に要する時間を短縮される。

今後は、巨大地震とそれに伴う津波の複合災害の被害予測への応用に向け、今回開発した技術を文部科学省が推進するHPCI戦略プログラムの1つである「防災・減災に資する地球変動予測」の課題テーマ「津波の予測精度の高度化に関する研究」の中で活用していく。