国立がん研究センター(国立がん研)は4月8日、大腸がんの新たな診断手法として、さまざまな細胞から分泌される微小な小胞で、血液や尿など体液中に存在している「エクソソーム」を診断に活用することで、早期であっても簡便に診断ができる手法を開発したと発表した。
同成果は、同センター 研究所分子細胞治療研究分野 の落谷孝広 分野長、吉岡祐亮 研究員らによるもの。詳細は英科学誌「Nature」の姉妹誌「Nature Communications」(電子版)に掲載された。
がん患者の体液中に存在するがん特異的なエクソソームはさまざまな情報が詰まった物質であることが知られているため、病態の把握や治療評価への利用が考えられいるが、従来法ではエクソソームを体液中から検出し、診断に用いるには多くの手間と1日という時間が必要であったため、実用化には至っていない。
今回、研究グループでは、エクソソーム膜上に存在するタンパク質を異なる修飾が施された2種類の抗体で挟み込み、2種類の抗体が200nm以内に近接する場合のみ、抗体に付加されたビーズが発光し、エクソソームを検出する方法を考案。これにより、1.5~3時間程度で、かつ使用する血液も5μlだけでエクソソームを検出することが可能になったという。
また研究では、大腸がん細胞が分泌するエクソソームに多く含まれるタンパク質の存在も確認し、実際に大腸がん患者194人と健常人191人の血清を解析したところ、従来の血液検査(腫瘍マーカーCEAやCA19-9)と比較して、診断能を評価する指標AUCが高いことが認められ、従来の血液検査では見つけることが出来なかった早期がんを検出できる可能性も示されたとする。
なお、今回の研究は、エクソソームの高感度検出のための抗体作成を担当した塩野義製薬、再現性を含めて、臨床検査としての実用化の検討を担当するエスアールエルとの共同で実施されたもので、国立がん研究センターでは、数年後の実用化に向けた準備を進めていくとしている。